2003年6月12日(木)「しんぶん赤旗」
政府は、イラク特措法案で、自衛隊がイラク国内で米軍などの武器・弾薬の陸上輸送も可能にする考えを示しました。法案の成立を許せば、自衛隊が、初めて外国領域で、武器・弾薬の陸上輸送に踏み出すことになりかねません。
外国領域での武器・弾薬の輸送については、二〇〇一年十月に成立したテロ対策特措法の政府当初案にも、相手国の同意という条件付きで盛り込まれていました。しかし、野党などから「(米軍の)武力行使と一体化の問題に抵触する懸念大」「憲法との抵触のおそれが高まる」との強い批判が上がり、政府・与党は、これを除外した経緯があります。
政府は、外国領域での武器・弾薬輸送についてPKO(国連平和維持活動)協力法でも「排除されていない」と説明します。しかし、自衛隊が活動を行うのは、紛争当事者間の停戦合意の後です。このため政府も「PKO法は、もともと大規模な武器・弾薬輸送を考えていない。実際に輸送がありえるのは小銃程度だが、自衛隊が実際に輸送した実績はない」(内閣府国際平和協力本部事務局)としています。
紛争当事者が自衛隊の参加に同意することも前提になっています。
ところが、イラク特措法案の場合、自衛隊が活動するイラクは、停戦合意どころか、外務省も「米英軍に対するバース党残党による散発的な戦闘がおこなわれている」としています。しかも、その一方の当事者である米占領軍の同意だけで、自衛隊が活動できる仕組みです。
政府は、戦闘地域外なら「米軍の武力行使と一体化しない」から、憲法が禁止する集団的自衛権行使にあたらないとしています。
しかし、イラクでは「戦闘地域と非戦闘地域の区別は不可能」との指摘が与党内からも上がっています。しかも、そもそも武器・弾薬に限らず、米軍への輸送、補給、医療など兵たん支援は、米軍の軍事作戦にとって不可欠の一部分を担うことであり、憲法が禁止する武力行使そのものです。
しかも輸送する物資が武器・弾薬となれば、それが直接、戦闘に使われることになります。違憲の武力行使なのは、誰の目からみても明らかです。(田中一郎記者)