2003年6月14日(土)「しんぶん赤旗」
サービス残業(ただ働き)の温床となっている裁量労働制の拡大をねらう労働基準法改悪案。日本共産党の小池晃議員の質問(十二日、参院厚生労働委員会)で、裁量労働制を野放しに広げ、労働者の健康破壊をすすめる問題点が明らかになりました。
裁量労働制は、「八時間労働」の原則を崩し、働いた時間ではなく、ノルマの達成に対して賃金を支払うものです。裁量労働制が導入されている職場では、厳しいノルマに追われ、いくら残業しても残業代は支払われず、過労死や過労自殺が多発しています。
改悪案は、裁量労働制を本社以外にも導入できるようにするなど、ホワイトカラーのほとんどに裁量労働制を広げようとしています。
小池議員 脳出血や心筋梗塞(こうそく)など労災認定の対象者に、裁量労働制が導入されている専門技術職、管理職、事務職が多く、長時間労働が背景にある。裁量労働制を拡大すればどういう事態になるか、背筋が寒くなる。過労死を生まないように、厚労省として全力をあげるのが責務ではないか。
坂口力厚労相 過労死しないよう、労働時間を抑制することが大事だ。しかし、企業にも一気に仕事をしなければならないときがある。そうしたときに、どう健康管理をしていくか、指針を示す必要がある。
過労死を防止し、労働者の健康を守るために、労働時間の把握はかなめです。裁量労働制をとる場合、使用者には、健康確保措置をとることを課せられます。
厚労省の過労死認定基準でも、「労働時間については十分に評価すること」と定め、労働時間の重要性を強調しています。
小池 裁量労働制についても、使用者が労働時間を把握しなければ、労災認定や労働者の健康管理はできない。使用者に把握の義務はあるか。
松崎朗労働基準局長 労働時間の把握は、使用者はしないというのが、(裁量労働制の)趣旨だ。
小池 労災認定でもっとも重要な労働時間の把握をしないで、労働者の健康を守れるのか。
松崎局長 実労働時間ではないが、在社時間など、労働時間の状況を把握する責務がある。
小池 健康を守るために、労働時間の把握をするのが使用者の責務だ。
労働時間の「把握」といわず、「状況の把握」と言い逃れる厚労省。労働者の健康を守り、過労死を防ぐうえで、裁量労働制を拡大させないことの重要性が浮き彫りになりました。
厚労省の「裁量労働制に関する調査」によれば、労働時間の把握方法について、「タイムカード、ICカード」による客観的な資料で把握しているのはわずか11・1%。一方で、「自己申告」は69・8%にのぼります。
小池 これでは、客観的資料は存在せず、労災認定のしようがない。「労働時間の状況の把握」というなら、客観的資料を義務付けなければ、過労死防止にはならない。
松崎局長 客観的資料にもとづき把握することが望ましいが、自己申告でもやむを得ない。適正に運用されれば、問題はない。
小池 五月二十三日に出された「サービス残業解消対策のための指針」は、「始業及び終業時刻の確認及び記録は使用者自らの現認またはタイムカード、ICカード等の客観的な記録によることが原則であって、自己申告制によるのはやむを得ない場合に限られる」としている。裁量労働制をやるのであれば、(労働時間を)把握する客観的な資料が必要ではないか。
坂口厚労相 できるだけ把握をした方がいいと思う。