日本共産党

2003年6月14日(土)「しんぶん赤旗」

労基法改悪案での参考人陳述 (要旨)

いつでも「雇い止め」の危険

弁護士・日本労働弁護団会長 宮里邦雄さん


 十一日の参院厚生労働委員会の参考人質疑で、弁護士で日本労働弁護団会長の宮里邦雄さんがおこなった労働基準法改悪案についての陳述(要旨)は次のとおりです。

 私は、解雇、有期雇用の雇い止めなどの裁判実務に携わった経験を踏まえ、意見を述べます。

 解雇についてです。「使用者は解雇できる」という規定が削除されたことによって、政府案よりベターなものになったことは評価したい。

 修正条文を、解雇立法として適切・妥当なものかという観点からとらえなおすと、不十分さが残っています。解雇規範としての明確性です。使用者の行為準則として、どのような場合に解雇が許されないのか、明確な法的メッセージが必要です。

 二番目に有期雇用です。正規雇用と有期雇用はどういう点で違うのか。

 第一に、有期雇用は不安定な雇用です。「期間満了」によっていつでも「雇い止め」できる危険性を持っています。

 第二に、同一労働に従事している場合であっても、賃金その他労働条件について、不合理な差別的処遇を受けています。

 第三に、更新の機会に、従前の労働条件を簡単に切り下げられます。

 第四に、雇い止めからくる不安は、労働者に労働基準法で保障されている最低限の権利の行使をひるませ、団結権をも委縮させます。

 今回の「改正」案は、有期雇用が持つ問題点について手当がされていません。使用者の求める雇用しやすいルールという観点から、有期雇用の拡大が図られるのは残念です。ここに法案に賛成できない理由があります。

 有期雇用には、労働者の拘束性という問題があります。衆議院で、三年の雇用について一年を超える場合の退職の自由が保障されました。なぜ五年雇用の特例労働者について、その措置がなされなかったのか。一九九五年の日経連の「新時代の『日本的経営』」は、専門的労働者を専門的能力を活用するために有期雇用にするんだと言っていました。退職の自由を五年の特例労働者についても図るべきです。

 企画業務型裁量労働制は、「みなし労働時間」であり、長時間労働やサービス残業を「合法化」する恐れが極めて大きい労働時間制度です。

 歯止めの重要な柱である「事業上重要な決定が行なわれる事業場に限る」という規定が、「改正」で削除されます。事業場要件は客観性を持った要件で、歯止めとしての意味は極めて大きい。これを取り外せば、広範なホワイトカラー労働者に(裁量労働制の)適用が可能になります。したがって、現行制度より緩和することに反対です。


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