日本共産党

2003年6月15日(日)「しんぶん赤旗」

イラク特措法案 ここが問題

戦後初 戦場に地上軍派兵

無法な軍事占領を支援


 イラク特別措置法案の狙いは、無法な戦争のうえにイラクの軍事占領支配をすすめる米英軍を支援するため、戦後初めて、現に戦闘がおこなわれている戦場に地上軍を派兵することです。法案の条文に即してみてみました。



侵略戦争を追認、正当化

 第一条 …イラク特別事態(国際連合安全保障理事会決議六七八号、第六八七号及び第一四四一号…に基づき国際連合加盟国によりイラクに対して行われた武力行使…事態をいう)

 法案は、イラク戦争を国連安保理決議にもとづいたものとしています。

 しかし、ここであげている国連安保理決議は、いずれも米英両国のイラク戦争を認めたものではありません。法案は、国際社会の多数が非難した侵略戦争を追認、正当化しようとするものです。

占領軍「同意」だけで

 第二条3 対応措置については、…次に掲げる地域において実施するものとする。

 一 外国の領域(…イラクにあっては、…イラクにおいて施政を行う機関の同意によることができる)

 法案は、いまも戦闘がつづくイラク国内で自衛隊が活動することを定めています。しかも、活動は「イラクにおいて施政を行う機関」=米英占領軍の「同意」だけで可能です。これは、これまでの海外派兵法と大きく異なる点です。

 PKO(国連平和維持活動)法では、自衛隊を外国領土に派兵するには紛争当事者間の停戦合意が前提です。紛争当事者の受け入れ同意も必要です。

 米国の対テロ報復戦争を支援するテロ対策特別措置法でも、外国領土での活動は可能ですが、その国の同意が必要とされます。戦場となっているアフガニスタンへの派遣はもともと想定されず、自衛隊はおもにインド洋上で活動をおこなっています。

 ところが、今回の法案は、国民を代表する統治機構もなく、いまも戦闘が頻発し、混乱状態がつづくイラク国内に、占領軍の「同意」だけで自衛隊を送り込むものになっているのです。

武器・弾薬の輸送も

 第三条3 安全確保支援活動として実施される業務は、国際連合加盟国が行うイラクの国内における安全及び安定を回復する活動を支援するために我が国が実施する医療、輸送、保管(備蓄を含む)、通信、建設、修理若しくは整備、補給又は消毒とする。

 法案は、「国連加盟国」、つまり米英両国の占領軍がイラクでおこなっている「安全及び安定を回復する活動」にたいし、自衛隊が、輸送、補給などの軍事支援をすることを定めています。

 この「安全及び安定を回復する活動」の内容については、法案にも、法案の根拠とされている国連安保理決議一四八三にも具体的な定義はなく、無限定です。

 米英占領軍は、治安維持活動ばかりでなく、いまもフセイン体制派の掃討作戦など大規模な戦闘行動をおこなっています。法案は、こうした戦闘行動にたいする支援を排除していません。

 このため、自衛隊がおこなう輸送の対象には、武装した米英兵や、武器・弾薬が含まれています。こうした自衛隊の活動は米英占領軍の戦闘行動に不可欠で、憲法違反の武力行使そのものです。

「非戦闘地域」線引き不可能

 第二条3 対応措置については、…現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる…地域において実施するものとする。

 法案は、自衛隊による活動を「非戦闘地域」でおこなうとしています。

 しかし、現実には「戦闘地域」と「非戦闘地域」との区別は不可能です。

 イラクでは連日のように占領軍とフセイン体制派などとの戦闘がつづき、「イラク全土が戦闘地域」(イラクの米地上軍を指揮するマキャナン司令官)です。

 石破茂防衛庁長官は「組織的・計画的ではない、国または国に準ずる者ではない者による、たとえば強盗などは戦闘(行為)とはいわない」(十三日)としています。しかし、マキャナン司令官は占領軍が受けている攻撃について「本質的に戦闘行動であり、犯罪ではない」(四日)と説明しています。

使用武器は限定なし

 第一七条 自衛隊の部隊等の自衛官は、…生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、…武器を使用することができる。

 法案が定める武器使用の基準は法文上、PKO法やテロ特措法と同じです。

 しかし、石破防衛庁長官は「十分な(武器使用)権限も与えないままに自衛官を危険なところに送り出そうとは毛頭考えていない」(十三日)とし、PKOなどで適用してきた「部隊行動基準」(ROE)を見直し、武器使用をしやすくする方向です。

 しかも、使用できる武器の種類には、なんの限定もありません。自民党の国防部会など関係合同部会では「武器の種類や部隊の運用に十全を期す」という決議(十二日)をしており、すでに関係者からは、護衛のために装甲車など重武装をした戦闘部隊を派遣する必要があるという指摘があがっています。

 自衛隊は、米英軍とともに、イラク国民に銃口を向け、あるいは向けられることになるのです。


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