2003年6月16日(月)「しんぶん赤旗」
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【プノンペン15日鎌塚由美、北原俊文】東南アジア諸国連合(ASEAN)の第三十六回外相会議が十六、十七の両日、カンボジアの首都プノンペンで開かれます。次いで、ASEANと日本、中国、韓国の外相会議、米国やロシアなども参加するASEAN地域フォーラム(ARF)の第十回閣僚会議、ASEAN拡大外相会議が十九日まで開かれます。
一連の会議期間中に、ASEANとロシアはアジア太平洋地域の平和と安全保障、繁栄と発展に向けた協力をうたう共同宣言を発表します。
米英が国連を無視し、国際世論の反対にもかかわらず、対イラク戦争を強行した後だけに、今回の会議では、国連の役割を強調するASEANの姿勢が際立っています。
ASEANは対イラク戦争に賛成せず、三月十九日の臨時外相会議の議長声明では、戦争が開始された後でも、イラク問題の解決で国連が中心的役割を果たすべきだと強調しました。対イラク戦争後初の今回の定例外相会議は、戦後のイラクの再建でも、国連の役割を再度強調します。
また、米国の一方的行動主義に対し、国連中心の国際秩序を擁護し、国連憲章をはじめ国際法の厳守を改めて訴えます。
北朝鮮の核兵器開発問題では、核不拡散体制への北朝鮮の復帰を求めるとともに、朝鮮半島の非核化、北朝鮮をめぐる諸問題の平和的解決を訴えます。
外相会議開催を前に、中国がASEANの基本的条約である東南アジア友好協力条約への加入を申請し、ASEANもそれを認めました。ロシアとインドも相次いで加入の用意を表明しました。
同条約は、ASEANの「憲法」ともいえるもので、独立、主権、平等、領土保全、民族的独自性の相互尊重、内部問題への相互不干渉、武力による威嚇または武力行使の放棄などを国家間関係の基準として定めています。ASEANは同条約を域外諸国に開放して、加入をよびかけています。
域外諸国が同条約に加入しても、ASEAN加盟国になるわけではありません。しかし、独立や主権の相互尊重、内政への不干渉、武力の不行使などの原則に基づきASEANとの長期の平和な関係を確立するという意義があります。
中国の正式加入は、外相会議後になりますが、実現すれば、域外諸国の最初の加入となります。
ASEAN・ロシア共同宣言も、国連憲章、東南アジア友好協力条約、国際法の原則の重視を約束する予定です。
過去にはお互いに争ったこともある多様な諸国からなるASEANは、多様性を認めて、他国の内政に干渉せず、協議を通じて合意を形成し、地域の平和と安定に寄与してきました。その「ASEAN流」を平和の国際秩序づくりに生かそうとしているといえます。
今回の外相会議では、ASEANの将来も大きな議題になります。
現在、促進しているASEAN自由貿易地域の目標を完全に実現した後の課題として、地域の経済統合をいっそう深化させることをめざす「ASEAN経済共同体」構想の検討が開始されます。
また、「ASEAN安保共同体」構想も提案されています。安全保障問題で結束を強め、域内の安保問題にASEAN独自で対処し、米国など外部からの介入を排除するのが趣旨だと伝えられますが、内実は今後の検討課題です。
アジア太平洋地域の唯一の政治安全保障協議の場であるARFは今回、十回目の閣僚会議を開きます。この間に、参加国を拡大し、東アジアのすべての国が参加するに至りました。バングラデシュやパキスタン、独立間もない東ティモールも参加を申請中です。
十回目の今回、地域の相互信頼の増進、平和と安定に対して、ARFが果たしている役割が再確認されます。
ARFは、東南アジア友好協力条約の原則で、ASEANが中心になって運営されています。そのために、北朝鮮と日本のように相互に国交のない国も同席して、政治安保問題を話し合えるわけで、ASEANが貴重な場を提供しています。