2003年6月17日(火)「しんぶん赤旗」
「新法が通ると、これまで戦闘地域に送れないとされていた自衛隊が戦地に派遣されてしまう」――与党や政府が成立強行をもくろむイラク特措法案について中国やシンガポールのメディアは批判的に報道しています。
中国の新聞・文匯報(電子版)十四日付は、イラク特措法案が「非戦闘地域」にしか自衛隊を派遣できないとしていることに注目。イラクでは小規模な戦闘や攻撃が頻発し、戦闘地域と非戦闘地域の区別は困難だと指摘しています。また、日本政府が、バグダッド付近で起きている自爆テロや占領軍への手りゅう弾による攻撃について、組織的な攻撃でなく戦闘行為とは言えないとしていることをあげ「(同法案は)安全かどうか判断する基準を明確に規定していない」と指摘しています。
中国共産党機関紙・人民日報(電子版)十六日付は、米国からイラクへの派兵要求を受けた際のインドと日本の対応の違いに着目した論評を掲載しています。
同論評は、インドでは内閣の安全保障委員会での二度の審議でもイラクへの出兵が決まらず、アドバニ・インド副首相が訪米に際し、ブッシュ米大統領から直接四十分にわたり派兵の依頼を受けた際にも、帰国してからでないと回答できないと述べたことを紹介。
訪日したアーミテージ米国務副長官が「観客席からフィールドに出てプレーすべきだ」と自衛隊のイラク派遣を求めたのに対する日本政府の反応は「(インドと)明らかに違った」と述べています。この違いは、日本政府が海外派兵を進める心情が「じっとしていられない」ほど急いでいることによるものだと指摘。「ここ数年国会で通してきた海外派兵関連法をみても、日本が自衛隊の海外での存在感を徐々に強めようとしているのは争えない事実だ。今回は米国の激励もあり、小泉首相はなりふりかまわず自衛隊をイラクに出そうとしている」と批判しています。
シンガポールの華字紙・聯合早報は十五日付で、「日本はイラクの復興を口実に派兵法案を今国会で通そうとしている」と報道。この法案は「日本が『反テロ』に名を借りたアフガンでの米軍支援の派兵に続いて、海外に兵を出し軍事行動を可能とするものだ」と批判。同法案で武器の携帯条件を緩めようとしていることを紹介し、「朝鮮半島危機」を利用しミサイル防衛構想を進めようとしていることとあわせて、日本の軍備強化に憂慮を示しています。