日本共産党

2003年6月19日(木)「しんぶん赤旗」

小泉政権で進む
「地球規模の日米同盟」の具体化

イラク特措法テコに

派兵恒久法も


 政府・与党は自衛隊が米軍のイラク占領を支援するためのイラク特措法案の成立を狙っています。これは「地球規模の日米同盟」づくりという米国の要求にしたがうものです。さらに政府・与党は自衛隊の海外派兵をいっそう進めるための「恒久的な法制」の整備を視野に入れています。(山崎伸治記者)


日米首脳会談で

 政府・与党がイラク特措法案の成立に固執する背景には、五月の日米首脳会談で「地球規模の日米同盟」を確認したことがあります。

 会談で小泉首相は、「安全保障面での日米協力を更に強化するため、グローバル(地球規模)な課題への取り組みを含め、両政府間の協議を更に進める」(外務省発表文)と発言。会談後の共同会見でブッシュ大統領は「日本と米国には地球規模の同盟、共通の関心と自由という大義への共通の信念にもとづくパートナーシップがある」と日米関係をほめあげました。

 米国のイラク戦争を支持し、それにつづく占領に自衛隊を派兵して支援することは、まさにその「地球規模の同盟」の具体化と位置付けられたのです。

自民部会が決議

 こうした動きのなかで、重大な議論が進んでいます。

 「国際的基準に合致した武器使用権限の規定を設けることを含む恒久的な法制の早期整備に努めることを法案の附則に明記する」――自民党の内閣・国防・外交三部会の合同会議が十二日にイラク特措法案の了承にあたってあげた決議の一節です。

 今回の法案には反映されませんでしたが、福田康夫官房長官は十三日の会見で「恒久法とはどういうものかということについて、これから大いに議論してほしい」とのべ、検討に意欲を示しました。

 「恒久的な法制」とはどのようなものか。福田長官自身の諮問機関「国際平和協力懇談会」が昨年十二月の報告書でこうのべています。

 「国連決議に基づき派遣される多国間の平和活動(いわゆる『多国籍軍』)への我が国の協力(例えば、医療・通信・運輸等の後方支援)について一般的な法整備の検討を開始する」

 同報告書は次のように解説します。

 「国際平和協力法(PKO協力法)では…『多国籍軍』は対象とはならず、また、テロ対策特措法も…限時法であるため、いわゆる『多国籍軍』への協力のための部隊要員派遣についての一般的な法的根拠がない」

 つまり「多国籍軍」にいつでもどこでも自由に自衛隊を派遣できる法律をつくろうということです。

 小泉首相はこの報告書について、「十分参考にすべきだ」とのべています。(二〇〇二年十二月十八日)

3カ所に同時派兵

 二〇〇一年四月に発足した小泉・自公政権のもとで、自衛隊の海外派兵は大きく広がりました。

 現在、自衛隊は海外の三カ所に派兵されています。PKO(国連平和維持活動)法によるゴラン高原、東ティモールへの派兵と、テロ対策特措法によるインド洋派兵です。それまで二カ所同時派兵はありましたが、三カ所同時派兵は初めてです。

 さらに政府はイラク派兵を狙い、特措法案成立に先行させ、PKO法にもとづくヨルダンへの派兵を七月上旬にも計画していると伝えられています。これが実施されれば、自衛隊が日本の領土外の四カ所ないしは五カ所に常時展開することになります。

 防衛庁は、イラクに過去最大の千人規模の派兵を想定しているとも報じられており、これまでにない異常な事態となります。

 PKO法やテロ特措法にもとづくものだけでも自衛隊の海外派兵はすでに“常態化”しています。自衛隊派兵の「恒久的な法制」があれば、それがいっそう強化されることはまちがいありません。

 「恒久的な法制」の議論がイラク特措法案の策定経過にからんでいたことからみれば、同法案の成立は、単にイラクへの自衛隊派兵にとどまらず、「地球規模」の派兵の“常態化”“固定化”につながる危険な道への突破口となりかねません。


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