日本共産党

2003年6月21日(土)「しんぶん赤旗」

報復戦争支援の誤り続く

国民の目届かぬ所でイラク戦争を脱法支援

政府・与党が成立狙う

テロ特措法延長案


 政府・与党は、アフガニスタンを中心にした米軍の対テロ報復戦争を支援するための「テロ特措法」を、期限が切れる今年十一月からさらに二年間延長する法改悪をおこなおうとしています。イラク特措法案(軍事占領支援法案)とともに、「延長国会で必ず成立させる」としています。同法延長の問題点についてみてみました。

テロ土壌広げ

 テロ特措法は、二〇〇一年九月十一日に米国で起きた同時多発テロに対する報復戦争を支援することを目的にしています。

 政府・与党が延長を必要というなら、この報復戦争でテロの土壌はなくなったのかどうかを検証することが大前提です。

 アフガニスタンでは、テロ組織アルカイダの活動がいまも衰えていないと報じられています。

 カルザイ暫定政権も全土の実効支配からはほど遠いのが実態です。

 軍閥同士の戦闘が起こり、同国を実効支配していたイスラム原理主義勢力タリバンの再結集もすすんでいるといわれます。

 世界的にみても、各地でテロが相次いでおり、「テロ根絶」どころか、その土壌はかえって拡大しています。

 イラク戦争直前にテロ対策の米大統領特別補佐官を辞任したランド・ビアーズ氏は、アフガニスタンへの軍事侵攻について、アルカイダなどを各地に散らしただけであり、現在「ビンラディンがアフガンのどこででも存在できる」と指摘。「対テロ戦争でブッシュ政権は、米国民をより危険にさらしている」と批判しています。(米紙ワシントン・ポスト十六日付)

 福田康夫官房長官は十三日の記者会見で、テロ特措法延長の必要性について「アルカイダによるテロの脅威は依然として深刻だ」とのべました。

 しかし、テロの脅威がいまなお深刻なのは、戦争によってテロ問題は解決できないことを逆に示しているのです。

給油活動減る

図

 米国自身が「アフガンは戦闘活動の場ではなくなった」(ラムズフェルド米国防長官、五月一日)として報復戦争を終結しつつあるもとで、いつまで支援をつづけるのかという問題もあります。

 そのことは、米軍への給油活動の激減にも表れています。

 政府は二〇〇一年十二月から今年五月末まで、同法にもとづいて、海上自衛隊の補給艦のべ七隻、護衛艦のべ十八隻をインド洋に派遣。米英軍の艦船などにたいし、計二百三十九回、約三十万八千キロgの燃料を補給してきました。その総額は、約百十五億円にのぼっています。

 ところが、今年三月以降、米軍艦船への給油活動が激減。給油対象国を米英以外に大幅拡大したために給油回数は急増したものの、給油量はもっとも多かった二〇〇二年三月の20─25%程度になっています。(グラフ参照)

 防衛庁幹部も「需要は頭打ちで軍事的な意味はあまりない」とのべ、米軍のニーズがなくなっていることを明らかにしています。(「朝日」三日付)

 それにもかかわらず、いまも補給艦「はまな」、護衛艦「ありあけ」、イージス護衛艦「こんごう」の三隻は、インド洋で給油活動をつづけています。自民党内からも「油のたれ流しだ」(野呂田芳成・元防衛庁長官)という批判があがっているほどです。

作戦は非公表

 しかも問題は、政府が、海自補給艦の給油活動について、日時や場所、対象になった艦船名など具体的な実態については「作戦内容が明らかになる」としていっさい公表していないことです。

 こうしたなかで、イラク戦争に向かっていた米空母キティホークが中東のオマーン湾で海自艦船から燃料提供を間接的に受けていたことが、同空母艦長の発言で明らかになりました。

 海上自衛隊はテロ特措法さえ逸脱し、イラク戦争を支援するという脱法的行為をしていたのです。

 テロの土壌がなくなったのかという最小限の検証もおこなわず、支援の実態も明らかにしないまま、法律の延長を強行しようとする──憲法違反の海外派兵を継続するなどもってのほかです。(竹下岳記者)


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