日本共産党

2003年6月21日(土)「しんぶん赤旗」

平和秩序へ独自の役割発揮

ASEAN(東南アジア諸国連合)会議


 カンボジアの首都プノンペンで十六─十九日、東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議、ASEANプラス日中韓外相会議、ASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会議、そしてASEANプラス対話国・機構による拡大外相会議が相次いで開かれました。一連の会議を通じて、国連を中心とした平和な国際秩序をめざし、また内政不干渉の原則を堅持しつつ国際的な懸念にも対応しようとするASEANから、平和秩序へのイニシアチブが広がりました。(プノンペンで鎌塚由美、北原俊文)

国連の中心的役割を強調

 米英による対イラク戦争の戦闘終結宣言後初の定例会議は、イラクにおける国連の役割を主張しました。

 外相会議の共同コミュニケは二カ所でイラク問題に言及し、「イラク戦争後の国連の中心的で、不可欠な役割」を求めました。コミュニケは「イラク国民の願望に従い、国際の平和と安定の維持における国連の責任に基づいたイラクの再建と発展での国連の不可欠な役割への支持を再確認する」と主張しています。

 拡大外相会議でも、異例の議長新聞発表が出され、イラクの再建において「国際の平和と安全保障の維持における国連の責任に基づく国連の不可欠な役割」への期待が表明されました。

北朝鮮核開発に率直な懸念

 外相会議や特にアジア太平洋地域の唯一の政治安保対話の場であるARFで、北朝鮮の核兵器開発問題に、各国の一致した懸念が率直に述べられました。ARF議長声明は、北朝鮮に対し、国際原子力機関(IAEA)との協力(核査察)を再開し、核不拡散条約(NPT)への復帰を要求するとともに、地域の恒久平和と安全保障のため「問題の平和的解決」を訴えています。

 これは、米政権が「北朝鮮に圧力を加えるべきだ」(パウエル米国務長官)と述べた強圧的な立場と異なるもので、今日の国際社会が切実に解決を求めている課題にこたえようとしたものです。

 北朝鮮代表団は、「議長声明の朝鮮半島条項を絶対に認めない」と表明しましたが、席を立つことはしませんでした。

 ARF議長声明はミャンマーに対し、民主化をめざして国民和解と党派間の対話を再開するよう要求し、国民民主連盟(NLD)のアウン・サン・スー・チー書記長と幹部の解放を求めました。

 ミャンマーのウィン・アウン外相は独自の記者会見を開き、「内政不干渉の原則はあるが」といいながら、会議で聞いた意見を、報道陣から出た質問も含めて持ち帰り、政府に伝えて検討すると約束しました。

信頼土台に問題解決めざす

 ARF議長声明は、総意を追求するものの、最終的には議長の責任で発表されます。参加国が特定の項目を保留し、声明や記者会見で独自の見解を述べること自体は、前例のないことではありません。

 一九九五年の第二回ARFでは、フランスと中国の核実験への批判に対し、欧州連合(EU)が拒否の声明を配布しました。九八年の第五回ARFでは、インドとパキスタンの核実験への批判に対し、インド外相が独自の記者会見を開き、自国の立場を主張しました。

 ARFは、安保問題に対し、信頼醸成、予防外交、紛争解決の三段階で取り組むとしています。

 ASEANは、信頼醸成がすべての土台だと考えています。信頼なしには、対話を開始できず、予防外交、紛争解決へと進むには、それに相応した高度の信頼が必要だというわけです。

 一国の内政に口出しや指図はしないが、一国の問題でも、地域や世界の平和と安定に大きな影響があるなら、話し合いをもちかけ、同意の上で、協議を通じて合意をみいだし、納得づくで解決をめざすのが、「ASEAN流」です。

中ロ印とも協力を広げて

 中国とASEANは共同新聞発表で、中国が今年十月のASEAN首脳会議の際に、東南アジア友好協力条約(TAC)に署名すると発表しました。

 TACはASEANの「憲法」ともいうべき条約です。国連憲章を土台に、(1)独立、主権、領土保全などの相互尊重(2)外部からの干渉、転覆、強制なしに自国を運営する権利(3)相互の内部問題への不干渉(4)紛争の平和的手段による解決(5)武力行使と武力による威嚇の放棄(6)諸国間の効果的協力─を国家関係の原則と定めています。ASEANもARFもこの原則で運営されています。

 同条約に加盟しても、ASEAN加盟国になるのではありませんが、ASEANと同じ原則での協力、協調を約束することになります。

 ロシアとASEANは、アジア太平洋地域の平和と安保、繁栄と発展をめざす協力をうたった外相の共同宣言を発表しました。同宣言も、国連憲章とTACを重視し、その原則に基づく関係の発展を約束しています。ロシアも、TACへの加入の用意を表明しています。

 インドもASEANとの外相会議で、十月のASEAN首脳会議でTACに署名することをめざして準備を進めることを表明しました。

 国連憲章を土台にしたTACの原則で平和、友好、協力の関係を広げ、内政干渉はせず、協議を通じた合意で納得づくの問題解決をはかり、平和な国際環境をめざす─ASEANから平和戦略が広がっています。それを、米国の一方的行動主義がまかり通る世界秩序を意味する「パクス・アメリカーナ(米国流の平和)」に対置して、ASEAN加盟国のある研究者は「パクス・アセアーナ(ASEAN流の平和)」と呼んでいます。


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