日本共産党

2003年6月23日(月)「しんぶん赤旗」

機能しないアフガン政権

イラク占領作戦に影響も

米シンクタンクの“戦争失敗宣言”


 米国の有力シンクタンク、外交問題評議会(CFR)などが十八日に発表したアフガニスタン情勢についての報告は、フセイン政権打倒後のイラク情勢の混乱を考慮すれば、事実上、米国のアフガニスタン戦争の失敗を宣言したに等しい内容となっています。

 二〇〇一年十二月のボン会議の最終合意に基づいて発足したカルザイ暫定政権について報告は、▽首都カブール以外を支配していない▽経済的にも税金・関税徴収能力を欠き予算の88%が外国からの援助だ―と指摘しています。

 経済混乱の下でケシ栽培がタリバン支配下末期の十八倍強にも急増し、「アフガンは再び世界最大のアヘン生産国になった」と述べています。

 ボン合意では、今年末までに憲法を承認し、来年六月までに全国選挙を実施することになっています。しかし報告は、アフガンの現状からは、この日程に沿った選挙実施は困難だとみています。

 報告は、国連が主導して調整してきたアフガンへの政治・経済援助は「ほどよく機能してきた」が、「世界はアフガニスタンといえば米国の戦争だと考えている」と指摘。「カルザイ政権への支持が不十分なために平和を喪失してしまえば、米国の信頼性は大きく損なわれ、将来起きる類似の危機への対処に国際的支持を得ることはいっそう難しくなろう」と強調しています。

 そこで報告が打開策として提起するのは、▽アフガン国家が安定するまで適正規模の米軍を駐留させカブール以外の平和維持活動の責任も負わせる▽米国は今後五年間に毎年十億ドル以上を経済援助する▽大統領選挙は実施しても議会選挙を遅らせる▽イラン、ロシア、パキスタンにアフガンへの内政干渉を停止させる―などです。

 しかし五月一日にカブールを訪問したラムズフェルド国防長官は、アフガンの交戦状態は終結したと宣言しました。

 ブッシュ政権にとって当面最大の軍事課題は、フセイン政権打倒後のイラク情勢の安定化です。同政権は、「フセイン残党」らとの戦闘状態を終結させ、各国軍隊に治安維持を肩代わりさせるのに躍起。CFR報告が提案するアフガンでの軍事行動の拡大どころではないというのが実情です。

 米国はアフガンでは、タリバン政権打倒からほどなく現地勢力を暫定政権に担ぎ出し、対テロ戦争の名目の下で欧州諸国を含む外国の支援も獲得できました。その結果が、報告の指摘するような失態です。今回の報告は、依拠すべき現地勢力も見いだせず、国際的な批判も強いイラクで、米国の占領作戦がアフガン以上の困難に直面する可能性をうかがわせます。 (坂口明記者)


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