日本共産党

2003年6月26日(木)「しんぶん赤旗」

イラク戦争と世界

第2部 国際政治の本流を探る(5)

活気の非同盟・途上国


 「主要八カ国(G8)は(植民地支配など)前世紀でやったことを真剣に反省して、世界各国に平等な機会を与えるべきだ」。ブラジルのルラ大統領が力をこめると記者会見場に緊張が走りました。

12人の首脳を招待

 先のエビアン・サミットで一番活気に満ち、会議全体を印象づけたのは、ブラジル、インド、マレーシアなど発展途上国・非同盟諸国代表の姿でした。G8そのものが米国の早退で異例の事態になったのと対照的です。

 十二人の途上国首脳は「G8と他の国の対話に道を開き、これを拡大していかなければならない」とのシラク仏大統領のイニシアチブで招待されたもの。経済のグローバル(地球規模)化の現実をみても、米国の一国主義や主要資本主義国だけが取り仕切る国際経済の仕組みでは立ち行かない。そんな現実を反映したもので、背景には多極世界の考え方があります。米国のブッシュ大統領が嫌ったのはその多極世界の流れが大きくなることでした。

 「今回のサミットが発展途上国を招いたことを歓迎する。将来、G8がG19、G20になっても面白い。しかし発展途上国側は招待されることで満足するのではなく、みずからも会議を持ち、政策を提言していく」

 ルラ大統領はこう強調。主要国が膨大な利益をあげ地域紛争の原因ともなっている武器取引に課税して「貧困と飢餓とたたかう世界基金」を提唱しました。メキシコのフォックス大統領はサミットを他の諸国に開放し、「貧困国、中所得国との対話」を進めるよう促しました。アフリカ諸国は貿易や金融体制の協議に途上国を正当に参加させるよう主張しました。

大衆集会の力発揮

 こうした対話を可能にする国際秩序は国連中心にすべきだというのも、代表たちが共通して強調したことです。五月末の中ロ共同声明でこの思想を明確に打ち出した中国の胡錦濤国家主席は「国連の権威を守り、世界平和の擁護と共同発展にはたす国連の主導的役割を十分発揮させなければならない」と強調しました。

 こうした動きに応えたのがNGO(非政府組織)の宣伝活動や「対抗サミット」ともいわれる大衆集会でした。「国境なき医師団」は、エイズなど世界の疫病対策に関し「事態は悪化の一途をたどっている」と訴えました。

 周辺都市での集会には欧州各国から電車、バスなどで十万人が参加、「イラク占領やめよ」「資本家中心のグローバル化反対」を叫びました。

 ルラ大統領は「社会運動が政治に圧力をかけることで社会改革は進む」と集会にエールを送りました。仏政府は暴力デモ取り締まりの一方で、会場許可やトイレ設置など集会を側面援助しました。主催国と途上国、対抗集会の息が合ったのです。

 仏紙ルモンドは拡大サミットに注目し「間接的に米国の政策への批判を表明した」と論評しました。

 非同盟や途上諸国が今日の世界の流れをつくりあげてゆく重要な構成要素になっている。エビアン・サミットはそのことを浮き彫りにしました。米国が議長国となる来年のサミットで、拡大対話がどうなるかわかりません。

 しかし米国にとって「パンドラの箱がエビアンで開かれた」(英紙フィナンシャル・タイムズ)ことは確かです。(ベルリンで片岡正明)(つづく)


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