2003年6月26日(木)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 牛肉の履歴表示が導入されますが、輸入牛肉を対象外とするのはなぜですか。(東京・一読者)
〈答え〉 牛肉の生産・流通ルートをたどれるよう履歴表示を義務づける「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」が六月に成立しました。牛のトレーサビリティ(追跡可能性)の確保をめざすため、トレーサビリティ法とも呼ばれます。生産者は牛一頭ごとに個体識別番号を表示した耳標をつけ、独立行政法人・家畜改良センターが牛の個体識別台帳を整備し、流通・小売でも業者が個体識別番号やロット(荷口)番号を表示します。
ただし同法はミンチなどを除く国内産牛肉だけが対象で、六割以上をしめる輸入牛肉は除外され、25%の牛肉しか履歴表示されません。そのため日本共産党など四野党は、輸入牛肉にも履歴表示を広げ、トレーサビリティ実施国からの牛肉には履歴表示させ、未実施国からの牛肉には未実施と表示させる修正案を共同提出しました。しかし政府・与党は「貿易障壁となる」などの理由でいっさいの修正を拒否しました。
日本へのおもな牛肉輸出国はアメリカ、カナダ、オーストラリアですが、オーストラリアはEU(欧州連合)向け牛肉ではトレーサビリティを完全義務化し、カナダも牛ID制度という個体識別制度を実施しています。他方アメリカは、国内の大半がトレーサビリティ未実施のうえ、トレーサビリティを義務付けているEUを「貿易障壁」だとWTOに提訴するなど、圧力をかけています。政府・与党が修正を拒んだ背景にもアメリカの圧力が指摘されています。
政府はアメリカなどが「BSE(牛海綿状脳症)未発生国」だとも弁解しましたが、履歴表示はBSE対策だけの問題でもありません。また「未発生国」だったカナダも今年五月にBSEが確認され輸入禁止措置がとられました。カナダ・アメリカ間では毎年百万頭以上の生牛の輸出入があります。
(博)
〔2003・6・26(木)〕