日本共産党

2003年6月27日(金)「しんぶん赤旗」

イラクの大量破壊兵器めぐり英議会で追及

政府の情報文書

外相、首相側近も「混乱」「誤りだ」

「国民あざむいた」批判広がる


 【ロンドン24日西尾正哉】イラクの大量破壊兵器をめぐり“国民をあざむいて戦争へと駆り立てた”と政府への国民的批判がひろがる英国で首相がウソをついて誤り導いたかどうかについての議会調査が進展。ブレア政権の中枢が追い詰められています。


 外交特別委員会での証人喚問では、二十四日にはストロー外相、二十五日には首相側近のキャンベル報道・戦略局長が相次いで証言席につきました。

「政府にとってばつの悪いもの」

 「ひどい混乱であった」「政府にとってばつの悪いもの」―ストロー外相はイラクの大量破壊兵器に関する政府の情報文書についてこうのべました。

 この文書は「イラク―その虚偽と脅迫、いんぺい構造」と題した十九nのもの。イラク側による国連査察団の活動の妨害に焦点を当てたものとされます。二月に公表されてすぐ英メディアが、大学院生の論文などを無断借用して作り上げられたものと暴露しました。

 この文書はいま、“めかしこんだ文書”とよばれ、首相のウソを示す具体的な情報文書として焦点の一つになっています。

 外相は、この文書は「ジャーナリスト向けの説明文書」で「重要なものではなかった」とも弁解しました。しかし米国のパウエル国務長官は二月の国連安保理で、イラクが国連査察団をあざむいていると批判演説した際、「イラクのごまかし活動についてこの上なく詳細に叙述している」とこの文書を賞賛していました。

世論と議会の圧力抗しきれず証人に

 二度証言を拒否した後、世論と議会の圧力に抗しきれず証人として出席した首相官邸の報道・戦略局長のキャンベル氏。「首相の側近が公の場に出る極めてまれな機会となった」(タイムズ紙)この委員会の調査の席で、同氏は、二月の情報文書は「誤りだった」「この文書作成の責任は私にある」と完全に誤りを認めるところまで追いこまれました。

 しかし一方で、“情報文書をもっとセクシーに書きかえろ”と同氏が情報当局に働きかけたとする疑惑については否定し、これを報じたBBCのジャーナリストについて「彼が言うことはすべてうそだ」などとのべ、BBCに謝罪を求めました。BBCは即座に、拒否する声明を発表しました。

 外交特別委員会のメンバー、保守党のジョン・スタンレー議員はキャンベル氏を追及する中で、「国会議員をはじめ国民はこの文書を情報機関が関与したものと信じていた。しかし実際はインターネットから切り張りしたものだった。下院は戦争に行くかどうかの採決の際、この文書は重要な要素となった。これは、首相への説明を行うあなたの非常に重大な失敗だ。このことを認めるか」と迫りました。

 外交特別委員会の公開調査はこれまで、ブレア首相の戦争強行姿勢に抗議して辞任したクック前外相、クレア・ショート前国際開発相や、政府に論文を無断借用された中東研究員などが証言。十九日には、ブレア政権筋が「もっとセクシーに」と情報文書を書きなおさせたと報じたBBCのギリガン記者が証言しました。

 同記者は、昨年九月に政府が出した「証拠文書」が「イラクの大量破壊兵器の配備は四十五分で可能」と強調したのは、「イラクの脅威が差し迫ったものだとした点で重要だ」と指摘。同記者の取材した機密情報に詳しい英政府高官は、「われわれはそれが一つの情報源からのもので反対したが、キャンベル報道・戦略局長が“四十五分で配備可能”を盛り込むようにした」と語ったと証言しました。

ブレア首相の証言求める野党

 政府が拒んでいた側近の証言が実現したことで、ブレア政権への追及がさらに厳しくなりそうです。保守党「影の国防相」のジェンキン氏は、「政府の劇的な妥協は、完全な法的な調査の必要をさらに強めるものとなっている」と強調しました。

 野党第二党の自由民主党のケネディ党首も「首相はさらに前に進むべきだ。キャンベル氏に証言させる準備があるなら、首相自身が委員会で証言することを阻むものは何もないはずだ」と指摘、首相の証言を求めました。


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