2003年6月28日(土)「しんぶん赤旗」
二十五日の衆院イラク特別委員会で日本共産党の赤嶺政賢議員がおこなった質問(大要)を紹介します。
赤嶺政賢議員 今度の法案の中では、「安全確保支援活動」を行うことになっているわけです。これは、明らかに復興支援、人道復興支援とは違う。
それで、米軍は、ちょうど私たちがイラクに着いた日に、「砂漠のサソリ」作戦というものをやっていました。バグダッド近郊です。規模は一千人の米軍が出動しているのです。これは大きな戦闘行為です。米軍は現にバース党あるいはフセイン政権の大規模な掃討作戦というのを各地でやっています。そうすると、この法律にある「安全確保支援活動」というのは、こういう戦闘行動をしている米軍に対する支援活動も行うことになるわけですね。
小泉純一郎首相 支援活動においては非戦闘地域に限りますから、日本としては、自衛隊を派遣する場合、非戦闘地域というものをよく見極めながら派遣しなきゃいけないと思っています。
赤嶺 自衛隊がどこで活動するかを聞いたのではないのですよ。この法律でいう「安全確保支援活動」というのは、バース党やフセイン政権の残党の掃討作戦を展開している米軍の「安全確保活動」に対する支援も行うのですねということです。
石破茂防衛庁長官 法案に書いてあるとおり、医療とか補給とかを行うわけでございます。
赤嶺 自衛隊が向こうで、米軍の「砂漠のサソリ」作戦とかと名づけられるような戦闘作戦に対して、物資を輸送したり兵員、弾薬を輸送したりということをやる活動もあるわけですよね。
防衛庁長官 武力の行使および武力の行使と一体化しない活動を行うことになっています。
赤嶺 そんな話をしているのではないのです。自衛隊は米軍の掃討作戦などに対する支援活動もやるのかやらないのかということを聞いているのです。総理、お答えください。
首相 掃討活動が行われているという地域は戦闘地域です。そういうところには自衛隊を派遣しないのです。
赤嶺 話をごまかしてはだめですよ。戦闘地域に行くか行かないかではないのです。そういう米軍を支援するわけですね。弾薬の輸送は、イラクの国民の橋の建設のために持っていくのですか。そんなことではないでしょう。医療といったって、イラクの国民は、野戦病院なんか必要ないですよ。
自衛隊がイラクでやる「安全確保支援活動」というのは、米軍(の掃討作戦)に対する支援活動も行うことになるのかならないのか、ここをはっきり答えてください。
防衛庁長官 他国がイラクにおいてフセイン政権の残党に対して実施している掃討作戦、これはアメリカが行っている掃討作戦のことを頭に描いていただければよいのですが、(その)掃討作戦に対して、わが国がこの法案に基づきまして後方支援を行えるのかどうかということについては、その国が行っている活動が、この法案に基づいてわが国が行う支援の対象となる「イラクの国内における安全及び安定を回復する活動」に該当するのかどうなのかにおいて判断をすることになります。
赤嶺 ですから、この法律に該当するようになれば、米軍がやっている「砂漠のサソリ」作戦のような戦闘行為に対しても、「安全確保支援活動」を、自衛隊は行うことになるのですね。そういうことですよ、総理。
首相 そうじゃないんです。掃討作戦をやっている地域というのは戦闘地域ですよ。そういう戦闘地域には自衛隊は派遣しない。
安全確保も、イラクの社会全体の安全確保ですから、戦闘行為の治安活動とは違うのです。
赤嶺 総理、答弁をそらしています。(米軍が)戦闘地域で行っているのは「安全確保活動」ですよね。私は、自衛隊が「安全確保活動」をやるとはいっていませんよ。「安全確保支援活動」をやるのでしょう。
そうすると、アメリカがやっている「砂漠のサソリ」作戦のような「安全確保活動」に対する支援は排除されるのですか、されないのですか。
首相 戦闘地域の安全確保と非戦闘地域の安全確保と両方あると思います。
赤嶺 何もわかっていません。戦闘地域での「安全確保活動」というのは米軍は現にやっているわけですよ。それは支援活動の対象になるのですか、ならないのですか。
首相 その活動が戦闘地域であれば、それはなりません。
赤嶺 戦闘地域で展開をしている米軍が、「非戦闘地域」に燃料を入れに来た。「いや、あなたは戦闘地域で今戦闘を展開中ですから入れません」ということでお断りするわけですか。
川口順子外相 単純に申しますと、いいという場合とそうでない場合とあるということです。その考え方は、先ほど防衛庁長官がおっしゃいましたけれども、他国が行う活動、(赤嶺議員が)おっしゃった例で言うと、アメリカ軍のやっている作戦がこの法案に基づきまして日本が行う支援の対象となる、「イラクの国内における安全及び安定を回復する活動」等に該当するかどうか、それによって判断をされるということです。
したがって、(該当すると判断)されるものとされないものとあろうかということです。
赤嶺 つまり、米軍への支援活動は排除しないことは確認しておきたいと思います。この法律に合致するということになれば、米軍の戦闘支援もできる。私はここにこの法律の核心があると思うのですよ。
赤嶺 次の質問に移りますけれども、では、総理がさっきからおっしゃっている「戦闘地域」、「非戦闘地域」を区分けする問題について聞きたいと思います。
(政府は)その区分けをする方法として、他国からの情報の収集や日本が独自に情報を収集して判断するといっているわけですけれども、情報の収集の主要な相手国は米軍だと思いますが、いかがですか。
防衛庁長官 それは、主要な国といえば米軍になります。
赤嶺 主要な相手国はアメリカだということを認めました。
そのアメリカのマキャナン(現地)司令官は、「全土が戦闘地域」と言っているわけですよ。みなさんが主要な情報を収集しようとするアメリカの現場のマキャナン司令官が、非戦闘地域はないということをはっきり記者会見で述べているわけですが、そうなってくると区分けのしようがないではないですか。どうやって区分けするのですか。
防衛庁長官 これは何度もお答えをして恐縮でございますけれども、この記者会見でマキャナン氏が全体的に何を言っているかということを見ないで、部分をとらえて、「コンバットゾーン(戦闘地域)」といったから、イラクは全土が戦闘地域だというのは、それはためにする議論だと私は思っています。
アメリカの行政的にいう「コンバットゾーン」であったとしても、それが日本国においていう戦闘地域というものとは重ならない。
赤嶺 防衛庁長官、テロ特措法のときから繰り返されてきた、アメリカのコンバットゾーンとは何かという、こんな概念の論争をしているんじゃないんです。
マキャナン司令官が記者から聞かれた問いはこれですよ。「イラクにおいて非戦闘地域はあるのか」。そのときの答えが、「いいえ、すべての正当な理由により、イラクは今なお戦闘地域と考えられる」。こう言っているのです。しかも、この中で、「私はそれが地域化されていると思う。一般的に、私の評価では、旧政権に忠誠を尽くす残党によるものだと思う。しかし、先ほども言ったとおり、他の影響が含まれる可能性はある」と。つまり、イラクは、今一番正確な情報を握っている米軍でさえ、どこで何が起こるかわからない、非戦闘地域と定められるような場所はないということになるのです。
私は、政府の調査報告書を見て大変びっくりいたしました。日本政府が現地に行って出した調査報告というのはたった二ページです。後ろに一枚地図がついているだけ。そして、会ってきたところはというと米軍の機関だけ、あるいは占領当局だけです。
その中で治安についていっているのですが、バグダッド市内およびバグダッド以南などの地域は、治安状況は改善されている、という報告があるのです。
私も南部地域に行きました。でも、連れていってほしいという町は、断られました。「まだ不安だ」とイラクの国民でさえそう言うんです。南部は安全だ安全だと言ってきたら、けさの報道では「英兵六人を殺害 イラク南部 武装組織が攻撃」とある。アメリカでさえ不意打ちを食らって犠牲者を出している。いつゲリラが攻撃をしてくるか、フセイン残党が攻撃をしてくるか、そういう情報が正確であれば、こんな犠牲者なんか出さなくたって済むではないですか。結局、アメリカでさえ非戦闘地域は決められない。なのに、何で日本が非戦闘地域を決めることができるのですか。
防衛庁長官 情報もきちんと集め、そして米軍の情報も、あるいは友好国の情報もきちんと集めて、そういう地域でなければ自衛隊は送らない、それは責任ある政府として当然のことです。
赤嶺 派遣される自衛隊は、PKOのときよりも武装が重武装化されて行きます。非常に危険な地域に行くという認識があるからこそ武器使用の問題も出てきています。不意の攻撃を食らえば、その武器を使って日本の自衛隊がイラク国民を殺すことになるかもしれない。あるいはイラク国民から襲撃されることにもなるかもしれない。
こういう危険なことを冒して、そして他国で武力の行使に転換するような危険を冒して自衛隊を派遣するようなことは文字どおり憲法違反であり、この法案の廃案を求めて私の質問を終わります。