2003年6月30日(月)「しんぶん赤旗」
【ワシントン28日浜谷浩司】イラクで米軍兵士の死傷が毎日のように続くなかで、米国内でも現地の危険性と軍事占領に対する懸念が強まっています。
二十八日には、四日間にわたって米軍が捜索を続けていた行方不明米兵二人が、バグダッド北部郊外で遺体で発見されました。バグダッドでは二十七日にも、買い物中の米兵が頭部を撃たれ、重傷を負うなど、武力衝突が日常化しています。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙二十六日付は、フセイン前政権の信奉者がなお多数おり、毎日のように攻撃を仕掛けているとして、「戦争は終わっていない」と指摘しました。
パウエル国務長官は二十七日、米公共ラジオ(NPR)の番組で、問題の解決が「困難で、時間がかかる」ことを認め、米国民は「忍耐と理解を示してくれるはずだ」と述べました。
ラムズフェルド国防長官は二十七日、上院に足を運び、イラク情勢をめぐって議員と協議しました。同長官が上院に足を運ぶのは一週間で三度目。頻繁な協議に議会の懸念が反映しています。
「米国と連合国の兵士の犠牲をきわめて憂慮していることは、言うまでもない」。ウォーナー上院軍事委員長(共和党)は協議後、記者団にこう語りました。
同委員長は「任務はやり遂げなければならない」と強気の姿勢を表明しましたが、それは軍事占領への懸念の強まりを裏書きするものとなっています。
同委員長は二十四日には、「アメリカ中が、イラクとアフガニスタンの情勢に深い懸念をもっている」と述べていました。軍事占領がうまくいっていないことを認めたものでした。
イラク占領軍を指揮する米中央軍のアビザイド次期司令官は、二十五日に上院で開かれた任命公聴会で、「米軍の関与は確実に長期にわたるとしか言えない」「見通せる限り、イラクには大規模な部隊が必要だ」と、力で抑えつける構えを強調しました。
パウエル国務長官も先のインタビュー番組で、「相当規模の軍の存在」の必要を指摘。「米軍だけではなく、他国の軍隊も援助してくれる」として、各国の部隊が近くイラクに到着することに強い期待をにじませました。
それにもかかわらず、軍事占領を支持する立場からも、ブッシュ政権はあまりに軍事偏重だとの批判が出ています。
ワシントン・ポスト紙二十五日付は一面で、イラクの復興と統治の重要任務が米軍人の手にあるが、「ほとんど全員が行政の経験をもたず、アラブ世界を知らない」と酷評しました。
二十七日には、米国防総省が在野のシンクタンクに籍を置くイラク問題専門家らを現地に派遣する計画を持っていることが明らかになりました。いずれもクリントン前政権下の国防総省や国務省で働いた経験をもつ人々で、これもまたブッシュ政権が自らの失敗を認めたに等しいといえます。