2003年7月1日(火)「しんぶん赤旗」
庶民のささやかな楽しみを奪う発泡酒・ワインの増税に続いて、七月一日から、たばこの税金が引き上げられます。取りやすいところから取る安易な発想であり、庶民を泣かせるやり方に国民の怒りがわき起こっているのは当然です。
加えて、来年からは所得税の配偶者特別控除の廃止や、消費税の中小企業特例の縮小が控えています。
許せないのは、こうした負担増を庶民や中小企業に迫る理由です。
小泉内閣は「経済活性化」のためとして、黒字の大企業向け法人税減税と、大資産家向けの相続税の最高税率引き下げなどを「先行減税」として実施しました。これで税収に開いた年間約二兆円にのぼる大穴を、庶民や中小企業への負担増によって埋めようというのです。
「経済活性化」と言いますが、今「V字型」の業績回復をおう歌している大企業は、同時に豊富な手元資金を持っているのが特徴です。ここに減税しても効果は上がりません。遺産が何十、何百億という一握りの資産家に対する減税も、経済活性化への効果はゼロに等しいでしょう。
お金が有り余ってため込んでいる大企業や資産家の減税のために、日々くらしに汗を流す庶民のふところから吸い上げるようなやり方には道理のかけらもありません。
しかも見過ごせないのは、一連の増税が、小泉内閣が乗り出そうとしている本格的な庶民増税路線への前奏曲にすぎないことです。
政府税制調査会が首相に提出した「中期答申」は、消費税を10%以上に引き上げる必要があると明記し、年金課税の強化など、中低所得層への過酷な増税を打ち出しています。
政府税調は、少子高齢化で社会保障にかかる財源を確保する必要があるからだと説明しますが、大企業には減税の方向を明確にしています。
庶民にはどんどん増税するが、財界・大企業は高齢社会の負担責任を免除していくということです。
社会保障は改悪につぐ改悪で、国民の負担と不安を高めているというのに、税金の負担まで庶民にしわ寄せするなど許せません。こんなやり方は高齢社会を支えるどころか土台を掘り崩します。
不平等化に警鐘を鳴らす橘木俊詔京大教授は、経済誌で「大不況下、低所得者の数が増加し、かつ高所得者はその所得額を増加させ」ていると指摘しています。
貧富の格差の拡大は高所得層と低所得層の格差が広がるだけでなく、中所得層が生活苦に陥り、その多くが低所得層に流れ込む形で進んでいます。圧倒的多数の家計が活力をそがれています。
消費税の導入・税率アップと反比例して、所得税の最高税率は20%以上、法人税率は10%以上も引き下げられてきました。税による所得再分配の効果が急速に低下しています。
小泉内閣の税制「改革」は、負担能力に応じた負担という税制の民主的な原則を根底から覆して、税制による所得再分配の弱体化を一気に加速させるものです。
行き着くところは市場で勝ったものだけが報われるいびつな税制と社会です。大多数の家計が低福祉・高負担に四苦八苦する、そんな社会に持続性があるとは思えません。
高齢社会を支えるためにも、経済を立て直すためにも、必要なのは、大企業・大資産家優遇の税制を改め、負担能力に応じた負担という民主的な原則に立った税制と社会保障を確立することです。