2003年7月3日(木)「しんぶん赤旗」
ヤミ金融への規制を強化する法案について与野党間で合意が成立、注目されています。法案の意義、特徴について、この問題にかかわってきた日本共産党の佐々木憲昭衆院議員に聞きました。
――与野党一致の法案提出で合意した背景は?
ヤミ金融をめぐる事件が深刻化しています。大阪八尾市の事件は一万五千円を借りて利子が一カ月で二十万円近くになり、「殺すぞ」などという恐喝的取り立てで自殺に追い込まれた(六月十四日)という衝撃的なものでした。こういう深刻な事態をくりかえさないよう、対策を強化しなければならないということが国民的な要請になっていました。
五月に野党四党が協議して共同提案をまとめ、その後与党案とすり合わせ、一致点を見ました。
――どう規制が強化されるのですか?
まず貸金業の営業ができる要件を厳しいものにしたことです。
私たちは「許可制」を主張したのですが、最終的には「登録制」となりました。ただし、登録して営業できる要件を厳しくしました。
例えば、暴力団やそれと関係のあったところには登録させません。一定の財産的基礎(法人五百万円、個人三百万円)がなければ登録できないようにしています。こうしたハードルを設けることでチェックを厳しくし、単に届け出さえすれば営業してよいということはなくなります。
また、貸金業規制法はこれまで登録業者だけを対象にしていましたが、無登録業者も対象にしました。取り立て行為の規制、広告・勧誘の規制や罰則も抜本的に強化されました。例えば、無登録業者は貸金の広告や勧誘をしてはならないと定めました。業者に登録証の携帯を義務付け、要求されたら提示する義務を負わすことにします。
また、出資法の上限金利年29・2%を超える金利で貸し付けた場合、現行の「三年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金」を、「五年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金」「法人の場合には一億円以下の罰金」と強化します。
――ヤミ金業者が違法な高金利で貸し付けた場合どうなりますか?
日本共産党は貸金業の上限金利の29・2%を超える部分については利子だけでなく元金も無効にする提案をしました。超高金利で貸し付けることが割に合わないことをヤミ金業者に自覚させるためです。
この提案は、残念ながらそのままの形では入りませんでした。しかし、その一部は与野党合意に取り入れられました。貸金業以外のすべての貸し借りの上限とした年109・5%を超えた場合は利子はすべて無効という形になったのです。(法文上、「当該消費貸借の契約は無効」という表現)
合意した法案には私たちの提案から見ると十分ではない面もありますが、超高金利で貸し付けるヤミ金業者に、利子が取れないという新しい規制が加わるため、一定の抑止力になると考えます。これはヤミ金融規制に効果があり、多くの被害者が救われる道を開きます。
なお、元金については無効と明記できませんでした。しかし、不法な貸し付け行為による場合は、民法七〇八条で元金も返還しなくてもよい道は残されています。
――規制の実効性ということでは。
付則で警察の取り締まりの強化が明記されるので、被害者からの訴え、告発がやりやすくなります。こうしたことを通じて、ヤミに隠れた部分に対する摘発、取り締まりの強化につながるといえます。
――サラ金、ヤミ金の被害の根本的解決するためには。
ほとんどは生活苦からヤミ金の被害にあっています。倒産、リストラなどから社会的に失業者が増えていて、国民の生活そのものが非常に苦しくなっていると思います。
もとをただせば政府がデフレ加速で、失業倒産を増やしているという状況があり、根本的には政府の政策を改めていく必要があります。
庶民の立場に立った金融政策に変えていくことも重要です。同時に、当面の被害を防ぐ対策を強めることが必要です。