2003年7月4日(金)「しんぶん赤旗」
障害者基本法の改正について与野党協議が始まり、今国会に改正案が提出される見込みです。日本共産党の考え方について、党議員団・障害者の全面参加と平等推進委員会事務局長の小池晃参院議員に聞きました。
――なぜ基本法の 改正なのですか。
小池 障害者基本法は障害者や家族のみなさんの長年の願いと運動がみのり、九三年に心身障害者対策基本法の改正という形でできました。
日本共産党は、「国連障害者の十年」の取り組みなどをふまえて独自の提案をおこない、障害者の「全面参加と平等」の趣旨が基本的に盛りこまれたため賛成しました。
それから十年がたち、障害者施策は関係者の努力で一定の前進がみられますが、いぜんとして厳しい現実があります。
二十一世紀を迎えて、障害者もだれもが安心して過ごせる社会をつくることは、国民の切実な願いであり、政治に課せられた大きな責務です。
障害者の「全面参加と平等」を真に実現し、生活と権利をまもるために基本法を今日の情勢にふさわしく改正することが求められているのです。
――出さ れている与 党案はどん なものです か。
小池 基本理念に「障害者に対して、不当な差別をしてはならない」との規定を明記するとしています。障害者差別禁止は基本法制定当初から求められていたものです。
また、「中央障害者施策推進協議会」を創設し、当事者や障害者団体代表が参加する審議会をつくります。
同協議会は、基本法制定のさいつくられたものですが、省庁再編にともなう審議会の統廃合で廃止されてしまったため、復活を求める声があがっていました。
障害者基本計画の策定を都道府県と市町村に義務付けます。これまでは国だけの義務で、障害者施策の前進のために地方自治体の計画策定が課題となっていました。
――日本共産党と してどう考えていま すか。
小池 出されている改正案は、自治体の障害者計画の義務化など、これまでわが党が主張してきた点も反映されており、基本的に賛成できる内容ですが、改善を求めたい点があります。
いま障害者は、雇用、社会参加をはじめ多くの分野で、権利を侵害されたり、障害を理由とした差別を受けている実態があります。
世界では、米国の障害者差別禁止法をはじめ差別禁止法を制定した国は四十五カ国を超えているといわれています。国連でも障害者差別禁止を含む「障害者の権利条約」が準備されています。
日本でも、基本法に差別禁止を盛り込むだけでなく、障害者にたいする人権侵害や差別のない社会をめざす「障害者差別禁止法」を、早期に制定すべきだと考えています。
また、基本法改正とあわせて、障害者施策全体の改善がはかられなければなりません。障害ごとに法律、施設体系、福祉施策などが設定されている現状を改め、障害者の範囲を拡大し、総合的な「障害者福祉法」を制定すべきです。
こうした点をふまえたうえで次のように修正する必要があると考えています。
まず、障害者の定義についてです。
基本法は身体障害と知的障害に加えて、「精神障害」を新たに位置付けた点で旧法より一歩前進したものでした。しかし、三つを列挙するという規定のため、難病、てんかん、自閉症などその他の障害者が対象外となるという問題点を残していました。
今回、改正案の「基本的政策」のなかで「難病等に起因する障害」との表現が盛りこまれたことは前進です。しかし、定義については変わっていません。
国連の「障害者の権利宣言」や「国際生活機能分類」(ICF)に見られるように、障害ではなく障害がもたらす生活上の困難さに着目して障害者とするのが国際的な流れです。この考え方にもとづいて定義を改正し難病をはじめ対象外とされている障害者が含まれるようにすべきです。
また、基本理念で「あらゆる分野への活動に参加する機会を与えられるものとする」との規定も見直すべきです。
障害者の参加は、恩恵的な性格ではなく、「参加する権利を有する」と改めるべきです。
――改正協議につ
いて今後どうのぞみ ますか。
小池 日本共産党として、障害者団体のみなさんなど関係者の意見を聞いて考え方をまとめ、与党の障害者基本法改正作業部会に伝えて検討を求めているところです。
法改正にあたっては、事前に各党協議の場を設けるとともに、障害者・患者団体の意見を広く聞くことも求めています。
日本共産党は、今回の基本法改正が障害者施策が前進する画期となるように、障害者・家族のみなさんとともに全力をつくしていきます。