日本共産党

2003年7月5日(土)「しんぶん赤旗」

イラク戦争と世界

第3部 中東・周辺国から(5)

「終わらぬ戦争」の混迷


 「イラク戦争は終わっていない」。アラブのマスコミの多くがこう報道しています。米国の週刊誌『タイム』(七日号)の最新イラク・ルポの標題も「終わり無き戦争」です。

1日1人米兵死亡

 米英軍によるバグダッド制圧から三カ月近くがたったイラクでは、占領軍と住民の衝突はますます激化しています。ブッシュ米大統領が五月一日に戦闘終結宣言をして以降、米軍の死者は少なくとも六十四人。一日一人が死亡していることになります。

 米軍は、イラク側の抵抗がフセイン大統領直轄の残存部隊やバース党残党によるものとして、大規模な掃討作戦を進めています。しかし住民の抵抗の背景にあるのは、米英の占領施策に対する不満と怒りです。決して一握りの「残存」勢力の仕業ではありません。

 「米軍のバグダッド侵攻で逃げ出したバース党勢力には、もはや占領に抵抗する力はない」。イラクのイスラム教スンニ派指導者のアーメド・カビシ師はアラブ紙アルハヤト(六月二十二日付)のインタビューでこう指摘し、「米占領軍はイラク人を抑圧すること以外何もせず、これが住民の抵抗を呼び起こした。始まりは個人レベルでも、最後には集団的な抵抗になる」と断言しました。

 イラク国内では、電気や水の供給不足、治安の悪化に対する住民の不満は想像以上に激しく、「生活や治安の点ではフセイン時代のほうがまだましだった」と答えた住民は一人や二人ではありませんでした。

 暫定行政当局(CPA)の英国人スタッフは「占領政策は混とんとしており、戦略的な指示が全くない」と語り、「問題は占領方針の欠如がもたらしたもの」と非難する米国人スタッフもいます。

 混乱しているのは住民生活だけではありません。占領当初、五月中にもといっていた暫定行政機構立ち上げ構想も混迷のままです。CPAのトップ、ブレマー文民行政官が六月初め、暫定行政機構設立の土台となるイラク国民会議設立構想を捨て、占領当局が勝手に指名する「政治評議会」構想を持ち出しましたが、これが新たな混乱と怒りを引き起こしています。

ソ連崩壊のように

 イラク国民の六割以上を占めるイスラム教シーア派の最高指導者の一人、シスタニ師は六月二十九日、「占領軍に評議会を指名する権利などない」と述べてイラク人による選挙を要求。同じくシーア派の政治組織、イスラム革命最高評議会(SCIRI)の指導者ムハマド・ハキム師は二十七日、シーア派の聖地ナジャフで演説し、「暴力による抵抗は最後の手段」としながら、「われわれは占領軍に対する平和的デモンストレーションを開始しなければならない」と呼びかけました。

 「アフガニスタン侵略がソ連崩壊の大きな要因となったように、イラク戦争と占領は米帝国主義の終わりの始まりとなる可能性がある」

 イラク占領開始直後、シリアのダマスカス大学で歴史学を教えるザッカール教授はこう語りました。 (カイロで小泉大介)(つづく)


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