2003年7月5日(土)「しんぶん赤旗」
四日の衆院本会議で日本共産党の赤嶺政賢議員がおこなったイラク特措法案に対する反対討論は次の通りです。(大要)
私は日本共産党を代表し、自衛隊のイラク派兵法、軍事占領支援法に対し、反対の討論を行います。
本法案は、イラクの復興・人道支援のための法案ではありません。米英がはじめた無法なイラク戦争とそれにつづく軍事占領に自衛隊を派兵し、日本が軍事占領に参加・加担する、まさに軍事占領支援法です。
戦後初めて軍事占領支援のために、しかも、いまなお戦闘が続くイラクに自衛隊を派兵することは、武力の威嚇・武力の行使、交戦権を否認した日本国憲法九条に真っ向から違反するものであり、到底許されるものではありません。
この重大法案を通常国会会期末に提出し、会期を延長したうえに、わずか一週間という短期間の審議で、中央・地方公聴会もイラク現地調査も行わず、数の力で押し通そうとする、議会制民主主義を無視したやり方に断固抗議します。
そもそもこの法案の出発点はイラク国民からの要請ではなく、「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」(地上部隊をだせ)という米国の要求に従い、小泉首相が「初めに自衛隊派兵ありき」で進めたものです。以下、具体的に反対理由をのべます。
第一に、この法案が前提としている、米英軍によるイラク戦争に全く正当性がないことです。政府は、イラク攻撃が国連安保理決議にもとづくものと言いますが、安保理事会がイラクに対する武力行使を認めていないことは明らかです。米国がイラクへの武力行使容認決議を画策したのにたいし、国際社会の圧倒的多数がこれを拒否した経過からいって明白です。
しかも、米英がイラク戦争の最大の口実とした大量破壊兵器はいまだ発見されず、米英国内ですら政府の責任追及が行われています。小泉総理は、イラクが大量破壊兵器を保有していると断言しながら、いまだその根拠を示し得ないことはきわめて重大です。イラク戦争はどこからみても「大義」は成り立たず、全く道理のないものであることは明らかです。
第二に、政府は米英の軍事占領に正当性があるといいますが、国連安保理決議一四八三は、無法な戦争にもとづく占領行政に合法性を与えておらず、国連加盟国の協力も要請していません。占領国に対し、国際人道法にもとづく義務や責任をはたすよう求めているにすぎません。仏・独などがイラク派兵を拒否しているのは当然のことです。
私は沖縄の米軍占領下で育ちました。占領された住民にとっては、いかなる理由によっても外国占領軍は容認しがたいものです。しかも、それが違法・不当な軍事占領であればなおさらです。現に米英の軍事占領支配は、イラクの国民から深刻な抵抗と反発を受け、武力衝突が続発しています。これに対し米英軍は、「治安の回復・安定」の名のもとに掃討作戦を展開しているのです。
その占領軍を自衛隊が支援することになれば、イラク国民の目に占領軍の加担者と映ることは明らかです。占領に抵抗するイラク国民から反発と抵抗を受け、砲火を交えるという事態も起こるのです。軍事占領に自衛隊が参加・加担することは断じて容認できません。
第三に、イラクへの自衛隊派兵は、憲法の平和原則に真っ向から反するものです。本法案は戦後初めて、現に戦闘が行われている地域に自衛隊の陸上部隊を展開させるものです。
政府は、イラク国内に「非戦闘地域」を設定するから憲法違反ではないといいますが、イラクの実情に照らせば、これは全くの虚構の議論です。米軍に対する攻撃が連日発生し、米軍の司令官自身が「イラク全土が戦闘地域」「戦争はまだ終わっていない」と発言しています。
このようなイラク国内で、自衛隊は武器・弾薬を含む輸送、補給、医療など、米軍への後方支援活動を行うのであり、いくら「非戦闘地域」だと言っても、攻撃を受けないとはいえません。
しかも派遣する自衛隊の武器装備に法的制限はありません。すでに、防衛庁は、重機関銃を装備した装甲車や対戦車砲などの武装を検討しています。米軍支援活動中の自衛隊が攻撃を受ければ、指揮官の命令の下に部隊として組織的に武器を使用し反撃することになります。これが、武力による威嚇、武力の行使、交戦権を否認した日本国憲法に反することはあまりにも明らかです。
日本のイラク支援は、イラク国民の意思を尊重し、イラク国民の要求にもとづき、国連を中心とした、非軍事の人道・復興支援でなければなりません。これは、全加盟国に人道救済・復興支援を求めている国連決議一四八三にも合致します。
私は、日本共産党の現地調査団の一員としてイラクを訪問しました。医薬品が不足している、医療技術の水準をあげたい、農業支援や雇用、職業訓練など、イラク復興のため日本の支援を求める声をききました。イラク国民から「軍隊の派遣」を求める声はまったくありません。こうしたイラク国民の声にこそ耳を傾けるべきです。
イラク国内に自衛隊を派遣し、イラク国民に敵対して軍事占領を支援することは、日本とイラク国民、イスラム社会との友好関係に深刻な障害をもたらすだけです。
長期にわたる軍事占領支配に自衛隊を派兵することは、日本の進路にとっても、世界の平和秩序にとっても、きわめて重大な障害をつくりだすことを指摘し、憲法違反のイラク派兵・軍事占領支援法の廃案を断固として主張します。