2003年7月7日(月)「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫委員長は六日、テレビ朝日系番組「サンデープロジェクト」で始まった新シリーズ「野党党首に聞く」に出演し、綱領改定案の内容など、日本共産党がめざす世界と日本の方向について、司会の田原総一朗氏のインタビューに答えました。
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冒頭、セクハラ問題とのかかわりで、志位氏が四日におこなった「訂正とおわび」の記者会見の意味について、田原氏が質問したことにたいし、志位氏はつぎのように答えました。
志位委員長 先週水曜(二日)の会見で、記者団からの「セクハラの再発防止策は」という質問に答えて、社会的道義を守るという党規約の精神を幹部が率先して実行しなければならないなど、二度とおこさないためにということをのべました。
ただそのなかで「党本部の勤務員は、自覚的なルールとして『外部飲酒は原則禁止』ということになっているので、それを守りたい」という趣旨のことをのべました。これが報道でずいぶん問題になって、本部にもどったら「志位さん、あれは違うよ」となりまして、会見録をおこしてみたら、たしかにこれはまちがいだということで、訂正の会見をさせていただきました。
まず、再発防止の一つとして酒の問題をいったのは、全然筋違いの問題でした。セクハラの再発防止のためには、男性と女性がほんとうに対等のパートナーとして尊重しあうという自覚を深くもつことが根本であるわけで、酒の問題という全然次元の違うことをいったのは、まちがった、見識を欠いた発言でした。
もう一点、「外部飲酒は原則禁止」といったのは、私の思い違いで、調べてみたら、三十年ほど前に党本部関係者が深酒のトラブルをおこした反省から、「外での飲酒は、羽目をはずさず、できるだけ慎んで、節度をもって」という自主的な申し合わせはあったが、「原則禁止」というのは勘違いして思い込んでいたというものでした。
この二つの点は撤回して、申し訳なかったとのべました。
つづいて綱領改定について話題が移り、田原氏が「共産党は、ぴりっと辛い方がいい」などとのべました。これにたいして、志位氏は、「ゆるめたとか辛いとかの話ではないのです。いまの綱領を決めたのは、四十二年前ですから、国民が綱領を読むうえで分かりづらいところがある。これを分かりやすくする。四十二年間には情勢の発展もあるし、党の認識や理論も発展した。それを盛り込もうということです」と答えました。
田原氏が「なんで共産党は共産主義にこだわるの」と質問。これに志位氏はつぎのようにのべました。
志位 二十一世紀という百年の単位で世界をみると、資本主義のままでやっていけるかという矛盾はたくさんあるでしょう。「グローバル化」のもとで貧富の格差がうんと広がる。金融や為替の投機がひどい。失業や不況が克服できない。オゾンやCO2の問題など環境破壊がひどい。この体制のままでいったい二十一世紀の人類は存続できるのかという矛盾があるでしょう。私たちは、資本主義は永久につづくものではない、いまいったような矛盾を乗り越えて未来社会にすすむ力を人類はもっているという考えなのです。
(矛盾を)解決する手段は「生産手段の社会化」ということにあります。いまは巨大な生産手段が「もうけ」のために使われている。そのことからいろいろな矛盾がおきる。それを社会全体のためにつかえるようにしよう。そのためにそれを社会全体が管理し、運営できるようにしようということです。
旧ソ連には生産手段の「国有化」はあっても、ほんとうの意味での「社会化」はなかった。「社会化」といえるには、「生産者が主役」――生産者が生産の管理や運営に自ら参加し、自ら動かす、とならなかったら、「社会化」とはいえません。
田原氏が、現綱領と綱領改定案を比較したフリップをしめし、「自衛隊を認めるんでしょ」と質問したのにたいし、志位氏は、つぎのようにのべました。
志位 自衛隊は憲法違反だという立場は変えていません。ただ一挙になくすわけにはいかない。これをなくすにはプロセス、段階がどうしても必要です。安保(条約)をなくしても、すぐに自衛隊をなくすわけにはいかない。民主的な政府ができて、安保をなくして、まわりの国とほんとうに平和の関係をつくって、それを国民のみなさんがみて、大多数の(国民の)みなさんが、「ほんとうに軍隊がなくても日本の国は安心だ」という合意ができて、初めて(自衛隊解消に)手をつけようではないかということなのです。
さらに田原氏は、天皇制について、共産党はこれまで「君主制の廃止」とのべてきたのに、綱領改定案では「(天皇制の)存廃は、将来、国民の総意で解決」としているのは、どうしてかと質問しました。これにたいして、志位氏は、(1)いまの憲法をよく分析すると、天皇は「国政に関する権能」をもたないとされており、君主とはいえず、日本は君主制の国とはいえないこと、(2)将来の問題としては、一人の人間、一つの家族が「国民統合」の象徴という制度は、民主主義とも人間の平等とも両立しない制度であり、天皇制の廃止をめざすという立場にたっていること、(3)いまの態度としては、憲法の全条項を守り、天皇については、「国政に関する権能」をもたないという条項を厳格に守ることが大切であり、共存していこうという立場だとのべ、つぎのようにつづけました。
志位 戦前と戦後は違うのです。戦前は、天皇は絶対権力をもっていたから、これ(天皇制)を倒さなかったら、社会の変革はできなかった。しかし、いまは(いっさいの権力を)もっていないわけですから、天皇制があっても、安保廃棄はできるし、社会の変革はできるし、状況が違っているわけですから、(綱領改定案では)それにふさわしい位置づけにしたということです。
最後に、田原氏が、綱領改定案について、「大きなカケに出ているわけか。冒険しているわけか。リスクをもって」とのべたのにたいし、志位氏は、つぎのように話を結びました。
志位 カケではありません。これは十年、二十年、三十年という将来をみこしての、方針ということです。いままでの大きな線は変わっていませんが、現代的ないくつかの改定を、たとえば民主主義的変革をどうするか、未来社会をどうするか、世界をどうみるか、こういう問題をしっかり明らかにしたということです。