2003年7月7日(月)「しんぶん赤旗」
イラク特措法案の強行や政治資金規正法にもとづく献金者名の非公開枠拡大など、自民党の悪政のお先棒を担ぐ公明党の姿勢が際立っています。解散権をにぎる小泉純一郎首相と自民党の山崎拓幹事長に協力することで、公明党が嫌う衆参同日選を回避し、今秋解散の流れをつくろうという思惑が指摘されています。
「同日選回避のため何でもありというのは、誠に不見識だ」
野中広務・自民党元幹事長は四日、公明党が自民党総裁選の前倒し実施を求めたとされることに、不快感をあらわにしました。
十一月一日に期限が切れるテロ特措法延長案を処理する臨時国会を九月中旬に召集する、そのために同月下旬に予定されている自民党総裁選を前倒し実施する―三日の自公保党首会談で浮上したのは、こんなシナリオです。公明党幹部は「10月解散の流れを確認する会談だった」と解説した(「朝日」四日付)といいます。そのために自民党総裁選日程にまで踏みこんだことに、「反小泉」の野中氏としては、がまんならなかったということでしょう。
衆参同日選挙回避のために、小泉首相と山崎執行部の政権運営に最大限協力する―この間の公明党の行動を貫いたのは、こんな党略的思惑です。
たとえば、無法な戦争にもとづく米英軍の軍事占領を支援するために自衛隊を派兵するイラク特措法案。かつてPKO法制定のさい、派兵のさいは「停戦合意」「受け入れ同意」など歯止めが必要と声高に主張していたことからみれば、その「原則」すらなし崩しにするイラク派兵は容易に受け入れられないはずです。
ところが、公明党は自民党内でも異論が渦巻いたこの悪法を、自民党総務会が「修正」のうえ了承するより先に、原案のまま認めたのでした。党内からは「『なぜ自民党も賛成していない法案に、我が党が率先してゴーサインを出すのか』との憤まんの声が上がった」(「日経」六月三十日付)ほどです。
自民党が「修正」で削除させた「大量破壊兵器等処理支援活動」にも、「あらかじめ大量破壊兵器についての活動を盛り込んだ方がいいのではないかと判断したと理解している」(神崎武法代表、公明新聞六月十二日付)と、政府方針に理解を示したのです。
陸上での武器・弾薬輸送について公明党は、テロ特措法のときには「慎重にすべきだ」といっていました。ところが、今回は神崎代表が「一つひとつの貨物について武器・弾薬が入っていないのかどうか確認するという煩瑣(はんさ)な作業になる」(同前)とのべ、あっさり承認しました。
「公明党が、なぜ公開基準の緩和に応じたのか理解に苦しむ。公党の責任として、国民に理解できる説明を行うべきだ」(「東京」六月十二日付社説)
企業団体からの献金者名を公開する基準を、現行の五万円超から二十四万円超にする――自民党が企業献金拡大を狙ってもちだした政治資金規正法改悪案。公明党がこれを「政治資金改革が前進」(公明新聞六月十九日付)などと強弁して推進したのも、説明がつかないことでした。
同党は当初、公開基準引き上げについて「政治改革は透明性を高める方向にあり、献金企業名の公開基準の引き上げは逆行している」(井上義久幹事長代理、同五月十四日付)と批判、神崎代表も「公開基準を引き上げることは反対だ」(同五月二十九日付)と明言していたからです。
ところが、自民党内から衆参同日選の可能性など、解散・総選挙の時期をめぐっての発言がでるようになると、態度を急変。「トータルで考えれば、半歩でも一歩でも前進だと受けとめている」(神崎代表、同六月十二日付)「(政治資金の透明度を高める方向と)バッティングするのか、この程度であれば、透明性はある程度確保できたと見るのか、の政治判断だろう」(冬柴幹事長、同六月十三日付)と賛成の方向に舵(かじ)を切ったのです。
自分たちに都合のいい総選挙の日程を固めるために、かつての主張も平然と投げ捨て、首相と自民執行部に同調、協力する公明党。小泉首相は「今まで公明党、保守新党は協力してくれたから、連立の信義は大事にしていく」と配慮をにじませています。党略優先で国民の利益と憲法をふみにじる態度は許されません。