2003年7月9日(水)「しんぶん赤旗」
イラクに侵攻した米軍がバグダッドを陥落させ、同国の占領を始めて三カ月になります。
現地では米軍が連日攻撃を受け、占領は泥沼の様相を強めています。
米英の主張する「イラクの大量破壊兵器保有」についても、根拠にした文書が偽物であったり、改ざんされていたことが明らかになり、国民を欺いて戦争を始めたのかという疑惑が広がっています。
米英がイラク攻撃の理由にした大量破壊兵器は、占領開始から三カ月たっても見つかっていません。
イラクが大量破壊兵器を保有しており脅威になっているという主張の根拠が、虚偽であったり操作されていたことも明らかになっています。
米大統領は一般教書演説で「フセイン政権がアフリカからウランを入手しようとした」と主張しましたが、その根拠となる文書が偽物であったことを、米政府みずから事実上認めざるをえなくなっています。
イギリスでは、イラクが国連査察団を妨害したと主張した文書が米大学院生の論文を盗用したものであることを外相や首相側近の報道・戦略局長が認めており、下院外交委員会の調査報告書も「政府の信頼を損ねた」とのべています。
だいたい米英が安保理で容認決議の採択に失敗して始めたイラク攻撃に正当性がないことは明らかです。
国連決議もなく、他国に侵攻し、政権を崩壊させて軍事占領するのはまさに侵略戦争であり、戦争を違法化した現代世界であってはならない征服戦争というべきものです。
イラク攻撃を「イラクの自由作戦」などと呼び、フセイン政権転覆が目的だといっても、「自決の原則」「加盟国の主権平等」を定めた国連憲章に違反するものであり、いっそう正当化されないものです。
戦争が違法なら、続く軍事占領が正当化されないのも当然です。
安保理決議一四八三も、米英に占領国としての権限、責任、義務を認識するよう求めているだけで、占領そのものを正当化してはいません。
米大統領は、軍事占領が長期になると言い出しています。
これも「イラクの主権と領土保全を再確認し」「イラク人が自らを統治する日が早急にこなければならない」とした安保理決議違反です。
アメリカは政権転覆が戦争の目的だったといいながら、なぜ米軍を速やかに撤退させ、国連中心の人道・復興支援に切り替えないのか。
侵略戦争が多くの場合、虚偽の事実を口実にして始められることは、これまでの歴史が教えています。
かつてベトナム戦争でアメリカが北爆開始の口実にした一九六四年のトンキン湾事件も、日本が中国への全面侵略戦争を始めた一九三一年の柳条湖事件もでっちあげでした。
根拠のない事実を口実に始められた大義のない戦争とそれに続く軍事占領に、侵略された国の国民が抵抗するのは当然です。
重大なのは、小泉内閣が虚構の証拠で始められた戦争を支持したばかりか、自衛隊を派兵して軍事占領に加担しようとしていることです。
日本共産党の志位委員長が党首討論で指摘したように、小泉首相は「イラクが大量破壊兵器を保有している」とメールマガジンでのべましたが、その根拠がないことも明らかになっています。
米英は速やかにイラクから撤退すべきです。小泉内閣はイラク派兵のくわだてをやめるべきです。