2003年7月10日(木)「しんぶん赤旗」
九日成立した国立大学法人法の参院審議は、五月二十三日の本会議での趣旨説明以来、二週間の中断を含め一カ月半に及ぶ攻防となりました。質問のたびに問題点が噴出し、与党が五日間の審議で強行した衆院のようにはいかなくなったからです。
同法が導入する新たな仕組みとして、中期目標・計画づくりがあります。文科相が定め、認可する仕組みにもかかわらず、遠山敦子文科相は「教育研究の内容には介入しない」と答弁しました。
ところが審議が進むと、文科省が中期目標・計画の項目を事細かに示し、学科・研究科ごとの研究内容についても提出を求めた文書の存在が明らかになりました。それも国会への法案提出前に、大学当局に示していたのです。文科省は「大学の求めに応じてイメージを示したもので、押しつけではない」と言い逃れようとしました。しかし、実態は大学への指示・指導そのものだった事実を示され、遠山文科相は委員会で謝罪せざるをえなくなりました。
付帯決議に「文部科学大臣は(中期目標を定める際)個々の教員の教育研究活動には言及しないこと」との文言が入ったのは、こうした審議経過の反映です。
法人法は、目標・計画の達成状況も政府がチェックすることになります。文科・総務両省内の評価委員会が評価するもので、「二重チェックで大学の負担が増す」との懸念が審議で出されました。当初政府は「総務省は、文科省の評価委員会の評価が適切かどうかを評価する」と説明し、直接大学評価はしないので影響は軽いと答えました。
ところが、中期目標の終了期限となる六年ごとの評価の際には、総務省が大学の改廃も含めて文科相に勧告できるという法案のしくみを突かれると、答弁に窮します。何度も答弁のやり直し。結局は政府が何重にも大学をチェックする法案の実態をごまかすことができなくなりました。
この問題についても「(総務省は)大学本体や学部等の具体的な組織の改廃、個々の教育研究活動については言及しない」と付帯決議に盛り込まれました。
こうした二十三項目にも及ぶ付帯決議は、異例の事態です。これだけでも、この法案が欠陥だらけで、本来廃案にすべきものであったことは明らかです。
およそ「大学改革」の名に値しない混迷ぶりでした。つじつま合わせの政府答弁をうのみにして賛成した自公保の与党議員らは、将来にわたって責任を問われることになります。
法案の重大問題を浮かび上がらせた日本共産党をはじめとする野党の論戦とあわせ、大学現場からの反対運動の高まりは、拙速な審議で成立を図ろうとした政府与党を追いつめる大きな力となりました。教育研究への介入を強め、基礎研究に大きな障害をもたらす法案の危険性は広範な大学人にひろがり、大学の自治を守る新たなエネルギーとなっています。
ひろがった運動と世論は今後、学問の自由や大学の自治を守るたたかいや、二十一世紀に国民の立場に立った大学改革を目指すとりくみに生きることでしょう。(坂井希記者)