2003年7月10日(木)「しんぶん赤旗」
【カイロ9日小泉大介】イラク戦争で米軍が首都バグダッドを制圧、フセイン政権が崩壊してから九日で三カ月が経過しました。米英軍占領下、電気、水など生活インフラの復旧は遅々として進まず、電気が完全に復旧するには二、三年かかるとの観測まで出ています。一方、最重要課題である治安も、安定どころか米英軍に対する市民の武力抵抗は日増しに激しくなっています。
米軍は、激化する自軍への武力攻撃の多くが、旧支配政党バース党の民兵などフセイン残党勢力とみなし、六月中旬以降、「砂漠のサソリ」「砂漠のガラガラヘビ」などと名付けた大規模な掃討作戦を進めています。これまでに千人近くのイラク人を拘束し、大量の武器を没収しました。
米軍の主張が正しければ抵抗は治まるはずですが、実際には米軍への襲撃はむしろ増えており、五月一日にブッシュ米大統領が戦闘終結宣言をして以降、八日までに二十九人もの米兵が襲撃によって死亡しています。
六日、首都のバグダッド大学のカフェテリアで飲み物を購入しようと並んでいた米兵の頭部を何者かが銃撃し、米兵は命を落としました。同様の事件は、六月二十七日にも発生し、バグダッド市内のCD店で買い物中の米兵が頭を銃撃され死亡しました。バグダッド北部では四日、米軍の補給基地が襲撃され、米兵十人が負傷、八日にも同じくバグダッド北部の基地が襲われています。
襲撃は待ち伏せから基地そのものへの攻撃にとエスカレートしていることが特徴で、米軍自身が警戒を強めています。
“掃討”作戦にもかかわらず、なぜ襲撃事件は増え続けるのか。
イラク住民の六割以上を占めるイスラム教シーア派のイスラム革命最高評議会(SCIRI)の指導者、ムハマド・ハキム師は七日、支持者に対する演説で、「米軍への抵抗は武力でなく平和的方法で」と訴える一方、「占領軍は、自軍への攻撃を旧体制のゲリラ部隊の仕業だと解釈しているが、私はこれらの行為はイラク国民の怒りから発しているものだと信じる」と述べました。
現地からの報道によれば、バグダッド大学の学生からは、銃撃で死亡した米兵への同情の声はほとんど聞かれないとされます。占領開始当時見受けられた住民の米軍にたいする「歓迎」ムードはいま、米占領体制継続にたいする脅威へと完全に変化しています。
イラク側による抵抗、そして七、八月には五十度にも達するしゃく熱の気候は、米軍兵士の士気にも重大な影響を及ぼしています。現地からの報道は、「誰が殺意をもっているか区別できない」「目の前にいるのはみんな(敵の)戦闘員とみるしかない」「トンネルの先の光が見えない」「兵士の誰がこの現状に我慢できるというのか」との米兵らの声や、任務からの離脱を希望している様子を伝えています。
いま、多くのアラブのマスコミはこの抵抗があたえる占領政策への影響を伝えています。エジプトの有力英字週刊誌『アルアハラム』最新号は「いまは完全なゲリラ戦を話題にすることは時期尚早であるが、イラク人の不満の声、低いレベルの衝突は、力強く増大する衝撃となっている」とし、同国の日刊紙アルワフド七日付は「米国の能力の崩壊」を指摘しつつ、「ブッシュ米大統領はイラク戦争が米国にたいする現在の抵抗を生み出していることを理解すべきである」と強調しています。