日本共産党

2003年7月12日(土)「しんぶん赤旗」

保育所運営費の国負担削減へ

国の責任さらに後退


 保育園の運営費国庫負担金が削減・見直しされようとしています。小泉内閣が「骨太の方針」第三弾(別項)に盛り込みました。子育て世帯の切実な保育要求にそむき、少子化対策にも逆行するものです。(江刺尚子記者)

法が定める責任

 保育園の運営で国と自治体が財政負担することは、児童福祉法が定める公的責任です。保育所運営費は、一人の子どもを保育するために最低限必要な経費の国基準(保育単価)をもとに総額を算定します。人件費、給食の食材費や保育材料費、管理費などが含まれます。

 このうち保護者が支払う保育料分を差し引いた残りの二分の一を国が、四分の一ずつを都道府県と市町村がそれぞれ負担しています。二〇〇三年度予算で国庫負担金額は四千二百二十億円です。延長保育などを入れると、国の予算額は約四千七百億円にのぼります。

 現在、認可保育園は公立・私立あわせて全国に二万二千カ所、二百三万人の乳幼児が入所しています。親の働き方が多様化するなか、延長保育や休日保育、病児保育や一時預かりなど、保育園の果たす役割はますます大きくなっています。最近では、家庭にいる親の育児相談や子育て支援にとりくむ保育園が増え、地域にとっても重要な存在になっています。

 ところが、「骨太の方針」第三弾では、保育所運営費を含む国庫補助負担金の削減を盛り込みました。約四兆円削減し、地方への税源移譲は、削減分の八割にとどめるというものです。義務教育費、保育所運営費などの義務的経費に限って十割移譲としていますが、それも「徹底的な効率化」が前提で、縮減の対象になります。

一般財源化では

 さらに「骨太方針」では、保育所運営費は、〇六年度までに、自治体の事情と判断で、何にでも使える一般財源化の検討を盛り込みました。

 保育所運営費は現在、使途を限った特定財源として交付されています。どの市町村に住む子どもにも等しく保育の最低水準を保障するためです。

 一般財源になれば、自治体は保育だけにつかう義務はなくなります。地域によって保育予算に格差が生まれ、職員の配置や設備などの最低基準が守られるか、保育の質が低下しないか心配されます。

 いまでも、国の基準額そのものが低く抑えられているため、実際にかかる経費は不足し、父母の払う保育料が高額になったり、市町村が、定められた負担割合以上の支出をしています。

 「骨太の方針」の方向は、不十分な国の負担をさらに削減して、公的責任を形がい化させ、父母や自治体にいっそうの負担を強いるものです。


 「骨太の方針」第三弾 小泉内閣が六月二十七日に閣議決定した「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」。国庫補助負担金の削減、地方交付税の見直し、地方への税源移譲の三つを同時にすすめる地方税財政の「三位一体改革」などを打ち出しました。


子どもの利益第一に

全国保育団体連絡会の上野さと子会長の話

 子どもは日本の将来を担う存在です。経済効率を目的に子どものための予算を削るなんてとんでもない。かつて『ポストの数ほど保育所を』の運動が広がった当時、政府は、膨大な待機児童に対応するための保育所整備計画を立て、特別の予算をつけました。いまはこれだけ保育園が求められているのですから、大規模な予算をとって、子どもの利益を第一に考えた緊急対策をおこなうべきです。


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