2003年7月12日(土)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 ILO(国際労働機関)の勧告にもかかわらず、消防職員の団結権否認を続ける政府は、どんな主張をしているのですか。(奈良・一読者)
〈答え〉 労働者が労働組合などを設立し加入する団結権は、憲法二八条が定める基本的人権です。しかし半世紀前に占領米軍の指示で消防職員などから団結権をはく奪した政策が今日まで続き、日本はILO加盟国で唯一、消防職員の団結権を認めない国となっています。政府は労働組合の代わりに一九九六年から「消防職員委員会」を導入しましたが、約三割が年に一度も開かれず、労働条件の議題は門前払いされています。
こうした事態にたいし、昨年十一月、ILO「結社の自由委員会」は中間報告で、消防職員などの団結権を認める法改正をうながしました。今年六月にはILO理事会が採択した勧告で再度、すみやかな法的措置などを要請しています。
けれども政府は、日本の消防は「警察」に含まれるとして、団結権を拒否しています。日本が一九六五年に批准した第八七号条約(結社の自由及び団結権の保護に関する条約)が、軍隊・警察の団結権の範囲は国内法で定める(第九条)としているのを盾にとったものです。
その論拠の一つが、日本では戦前まで消防が警察の一部だったという「歴史的沿革」です。しかし戦後、連合国軍総司令部(GHQ)の指令で消防は警察から分離され、一九四八年施行の消防組織法で、市町村などが責任をもつ、警察とは別個の自治体消防に再編されています。
警察と消防の協力関係や火災近隣建物の破壊などの強制権限なども論拠とされます。しかし独立した組織の対等な協力は警察との一体性を意味せず、税務署など他の行政機関にも強制権限はあります。他国の消防組織でも事情は同様です。
政府の論拠が成立しないことは、ILOも一九七三年以来、指摘してきたことです。二十一世紀になっても、団結権を禁止する身勝手な解釈を続けることは許されません。
(博)
〔2003・7・12(土)〕