2003年7月15日(火)「しんぶん赤旗」
「日韓併合は両国が調印して国連が無条件で承認した」「南京大虐殺の犠牲者が三十万人というのはでたらめ」──。自民党の江藤隆美元総務庁長官は十二日、福井市内でおこなった講演で、朝鮮半島、中国に対する日本の過去の侵略と植民地支配などに関連し、暴言を連発しました。
これに対して韓国、中国両国政府が批判しています。
韓国の外交通商省は十三日、江藤氏の発言について「当局者論評」を発表し、「政権党である自民党の責任ある政治家が、誤った歴史観をもとに時代に逆行する発言を繰り返したことで、しばしば問題を引き起こしていることに対し、深く失望し、嘆かざるをえない」と批判しました。
論評は「同様の問題発言が韓日友好関係はもちろん、日本自身のためにも望ましくないという点を明らかにするものであり、過去に対する正しい歴史認識なしには、真の韓日関係の発展が実現しがたい」と強調しています。
一九一〇年の韓国併合条約は「両国が調印して国連が無条件で承認した」として日本の植民地支配を正当化した自民党・江藤隆美元総務庁長官の発言は、時間と空間を飛び越えた荒唐無稽(こうとうむけい)というほかありません。
江藤氏のいう「国連」が国際連盟のことだとしても、同連盟が創設されたのは一九二〇年一月。いまの国際連合の創設は四五年十月であり、いずれも韓国併合のはるかあとのことです。江藤氏の発言はまったくのでたらめです。
もともと同条約は、日本政府が軍の武力による威嚇、脅迫で押しつけたもの。当時の韓国政府がみずから選択し、自由な意思のもとで調印したものではありません。
日本政府は戦後一貫して、朝鮮侵略と植民地支配を正当化し続けました。しかし、九五年十月十七日の参院予算委員会で村山富市首相(当時)が「当時の力関係の背景を考えた場合、けっして平等に結ばれたものではない」と認めました。
江藤氏は同内閣で総務庁長官を務めながら、同年十一月、「植民地時代、日本はいいこともした」と発言。内外からの強い批判を受けて閣僚を辞任しました。しかし、その後も「国と国とが条約を結んで決めたことのどこが侵略なのか。町村合併といかほどの差があるのか」(九七年一月十三日、北九州市内での講演)などと繰り返していました。
朝鮮半島の植民地支配をめぐっては、自民党の麻生太郎政調会長の「創氏改名」発言が日韓で問題になったばかり。日本政府は九八年十月の「日韓共同宣言」、昨年九月の「日朝平壌宣言」で過去の植民地支配清算について明言しています。にもかかわらず、こうした妄言が繰り返されるところに、過去の歴史認識についての自民党の無反省が現れています。(山崎伸治記者)