2003年7月15日(火)「しんぶん赤旗」
|
「人々の間で、物事を白と黒に単純に分けるこれまでの思考が変わりつつある」。プラハ市内の喫茶店で東欧諸国の平和運動についてチェコの有力紙プラーボのユイジ・ロシュコット記者が強調しました。
東欧諸国は、旧独裁体制崩壊から今年で十四年。体制と結びついてきた運動への嫌悪感や、旧体制やソ連と敵対関係にあった米国への支持が強いことから、平和運動は盛り上がりを欠いてきました。それが、イラク戦争という無法な米国の対外政策を経験することで徐々に変わりつつあるというのです。
変化は、「ソ連はだめだからアメリカ」「フセインはだめだから戦争」といった単純に物事を区別する考え方からの脱却として表れ、これに伴って世の中で起きていることを自分の頭で考えようという人たちが増え始めていると同記者はいいます。
「自分の反対の声を、とにかく誰かに伝えることが必要だと思ってここにきました。多くの人を殺す戦争には何の意味もありません」。イラク戦争前、プラハのブルタバ川沿いで開かれた小さな反戦集会に参加した高校生のマリエ・ノイマノバさん(18)もその一人です。イラク戦争はマリエさんにとって、世の中のことを考えるきっかけになったといいます。
イラク戦争反対の運動は東欧各地に広がりました。世界で同時に行われた二月十五日のデモには、ブダペストで二万人以上、ザグレブで約一万人、プラハで四千人、ワルシャワ、リュブリャナで約二千人が参加しました。
「デモや集会の規模は小さいけれども、昔のように所属する組織に言われていやいやきている人はいない。みんな自発的に参加しているから盛り上がりも違う。雰囲気もいい」。スロベニアのある女性平和活動家は、新たな平和運動の傾向について説明しました。
チェコの平和運動の一翼を担った共産青年同盟のミラン・クライチャ副議長は「若い人たちの参加が目立った」と、自らも参加した平和集会を振り返ります。二月十五日のプラハの集会は、約六割が高校生などの若者だったといいます。
一方、イラク戦争反対と結びついて、これまで見られなかった軍事同盟反対の運動もスロバキアやスロベニアを中心に広がりました。
三月末発表の世論調査によると、スロバキアでは、52・2%が北大西洋条約機構(NATO)加盟に反対、賛成の34・3%を大きく上回りました。世論を背景に、同国では、有名歌手やチャルノグルスキ元首相、スロバキア共産党などが、NATO加盟の是非を問う国民投票を求める請願署名を呼びかけ、四月初めまでに二十五万集めました。
最終的に、議会が、共産党を除く各政党の賛成でNATO加盟条約を批准したものの、政府側は、国民投票を避けて、議会で強引な承認をせざるを得ない状況に追い込まれました。
「戦争は終わったけれども、反戦平和の活動は今も静かに続いている」。クライチャ副議長が強調しました。昨年末に結成された市民団体「戦争反対運動」は、現在も小さな勉強会や討論会を中心に活動を継続中です。(プラハで岡崎衆史 写真も)(つづく)