日本共産党

2003年7月16日(水)「しんぶん赤旗」

年金「改革」 具体化急ぐ厚労省

“給付削減、負担増”へ


 厚生労働省は、二〇〇四年度に年金制度を大改革するとして、社会保障審議会年金部会で審議を急いでいます。同省は、「今秋の早い段階で省の案をとりまとめたい」としていますが、国民には「給付削減・負担増」の大改悪の方向です。

保険料20%に

 年金部会は、「個別問題の論議は終わった。次回から総括的な討論をする」(三日、宮島洋部会長=早稲田大法学部特任教授)としています。

 部会での論議は、昨年十二月五日に厚労省が発表した「年金改革の骨格に関する方向性と論点」にそったもの。この中には、いくつかの選択肢が用意されていますが、中身はいずれも、「給付の削減と負担増」です。

 厚労省が有力案としているのが、「保険料固定方式」です。

 これは、段階的に保険料を引き上げて、厚生年金を二〇二二年度までに20%(これを労使折半)にする(現在13・58%)、国民年金保険料を二〇二〇年度に月一万八千五百円(現在一万三千三百円)にする方式。

 厚生年金保険料は、今年度から総報酬制となり、ボーナスからも高い保険料がとられるようになりました。それが20%に引き上げられると大変な負担です。

 一方、年金額については、固定した保険料に応じて低く設定しています。今春物価スライドを適用したとして、この四月分から年金受給者も0・9%引き下げられ、年金生活者から大きな怒りがあがりました。「調整」の名目で、今後さらに削減できるようになっています。物価スライドだけではなく「少子化などの社会経済全体の変動を年金に反映させる」という「マクロ経済スライド」方式をとろうとしています。「少子化」などを理由に、新たな受給者ばかりか、既に年金を受給している年金額を削減するとしているのです。

 これに加え、現在非課税になっている遺族基礎年金にも課税するべきだ、などという年金課税強化の主張もでています。

 「調整」や課税で、年金収入は先細っていきます。

パートからも

 厚労省は、パートタイマーへの厚生年金適用、専業主婦への適用問題などについても提示しています。

 厚生年金保険への適用要件を大幅に緩和し「週所定二十時間以上、または年収六十五万円以上」とし、これにより、「第三号被保険者」とされている主婦など約四百万人のパートタイマーから新たに保険料をとろうというものです。

 同省の試算によると、月給七万円のパートタイマーは、四十年加入で受け取る厚生年金は月額一万五千円に過ぎません。しかし、現実には四十年もの長期間パートタイマーという主婦は少なく、この案では、主婦の年金は微々たるものになります。はっきりしているのは、これらの施策が保険料増収策として有効な手段ということです。

免許出さない

 日本経団連の奥田碩会長は、五月二十日の社会保障審議会で、国民年金の保険料未納問題をとりあげて「保険料を納付していない人には、ペナルティーとして自動車運転免許証やパスポートを出さない」ということを主張しました。

 社保審年金部会でも、保険料の強制徴収の主張が出ています。

 もともと、国民年金は、自営業者、農民などのほか、急増している失業者など弱い立場の人が加入している制度です。このため、この法律自体が、「督促・滞納処分」については「督促することができる」(国民年金法九六条)となっており、必ず督促することにはなっていません。

 強制徴収をうながす奥田氏などの主張は、国民年金法の基本にも反するものです。(鈴木進一記者)


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