日本共産党

2003年7月16日(水)「しんぶん赤旗」

イラク特措法案

「疑問だらけ」 海自元幹部語る

対米追従が国益にかなうか、考えるべきだ


 イラク特措法案について、海上自衛隊の元高級幹部が「疑問だらけ」「(政府説明は)軍事常識からもかけ離れている」と厳しい批判の見解を本紙に語りました。

 イラク特措法案には派遣される自衛隊について二つの目的がうたわれている。一つはイラクへの人道支援であり、もうひとつは安全確保支援だ。

 最初の段階では大量破壊兵器の捜索があったが、これは削除された。もともとイラク戦争自体、イラクの大量破壊兵器の除去を目的としていた。小泉首相もそのように国会で答弁している。その目的がなくなったということは、自衛隊派遣以前に、イラク戦争そのものの正当性がなくなったということだ。

軍事常識

 残る二つの目的を検討してみてもその正当性、必要性は疑問だらけだ。

 まず、人道復興支援だが、イラク国民の状態を考えると、やるべきことはたくさんある。医療、衛生、食料、住宅…。しかし、国会でこうした具体的なイラク国民の要望やニーズについて政府から提案はあるか。国会議論では具体的なことは聞かれなかった。

 しかし、具体的に議論されていることがある。自衛隊による米軍への水や油の支援だ。それも米英軍の具体的な要求として出ているかどうか問題だ。

 軍隊であれば自己完結型、つまり、他国の部隊の力を借りなくても任務を遂行する。これが軍事常識だ。当然、米軍も自己完結型だ。今回はイラク戦争のような大規模なものではないし、補給物資は十分ある。米軍が自衛隊に水や油を補給してほしいから、ぜひきてくれというよりは、せいぜいあったほうがいいという程度だ。

 簡単にいえば、足手まといにならないようにして米軍から、「水が必要」といわれればもっていくだけ。「油が必要」といわれれば持っていくだけ。これが自衛隊がやることなのか、といいたくなってしまう。

 「戦闘地域」「非戦闘地域」の区分けも、政府の主張は軍事常識からかけ離れている。いったい「戦闘区域」、あるいは安全な場所を決めるのは誰か。これは自衛隊でも米軍でも日本政府でもない。

 ゲリラが攻撃を仕掛けたところが戦闘区域だ。当たり前のことだ。ゲリラがこれまで安全と思われていた地域を「あっという間に」危険地帯にする。しかも相手は地理にもくわしい。民衆の間に入り込むこともできる。実際にイラクでは今も米軍が命を落としている。安全な所なんていうのは幻想にすぎない。

事前約束

 また、国会議論ではもうひとついいたいことがある。

 小泉首相は「夜盗・強盗のたぐいに襲われたら殺される可能性がないとはいえない。たたかって相手を殺す場合もないとはいえない」などといっている。散発的なたたかいで自衛隊員が死んでもしょうがないといっているわけだ。こうした答弁を聞くと、武力行使を前提とした「派兵」ではないかと批判されても仕方ない。だから、隊員が死ぬかもしれないということばが平気で口をついてでてくる。

 どうしてこんなことがいえるのか。ブッシュ−小泉会談で事前に約束があって、自衛隊を出すことそのものが目的となっているのではないか。ブッシュは多くの国を参加させることでイラク戦争の正当化を図ろうとしている。そこにあるのはアメリカの戦略であって、日本の国益から出発して決めたものではない。

 日本は日米同盟にしばられて国家目標や国益すら明確にもてなくなってきている。そしてアメリカの要求にこたえるため、憲法解釈も変えてきた。これほど自分たちに都合のいいように憲法を解釈してきた国がどこにあるだろうか。これほどの対米追従が日本の国益にかなうのかを、今こそ考えるべきだ。


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