2003年7月16日(水)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 「占有屋」排除を理由に民法の「短期賃貸借保護制度」を廃止する法案が論議になっているそうですが、どんな問題がありますか。(東京・一読者)
〈答え〉 「短期賃貸借保護制度」とは、借りている土地や建物・動産などが競売にかけられ、持ち主が代わっても、短期の賃貸契約なら、借り手が前の所有者と結んだ契約を保護する制度です。建物の場合は、期間を三年以内とする賃貸借契約が保護されます。
いまの民法のしくみでは、担保権の設定登記後に発生した賃借権は、担保権に対抗できません。担保権が行使され建物が競売されると、落札した新しい所有者には賃貸契約は引き継がれず、借り手は明け渡し要求などに応じるほかなくなります。新しい所有者からは敷金も返ってきません。民法三九五条の短期賃貸借保護規定は、このように不安定な借り手への、最低限の権利保障です。
この制度廃止などを盛った担保物権・民事執行制度改定法案が六月に衆院を通過し、参院に送られました。競売不動産を占拠して買いたたいたり法外な立ち退き料を請求する「占有屋」排除が目的とされています。
しかし、いまは民法ができた明治期と違い、賃貸マンションやテナントビルの大半は銀行の抵当権を設定して建てられているため、家主の破産など借り手に責任のない事情で明け渡しを迫られる例が多発しています。賃借権を十二年は保護するフランスや居住用の賃借権は永久的に保護するドイツのような、借り手の権利強化が課題でした。
短期賃貸借保護の撤廃は、こうした流れにも反します。この制度を廃止しても「占有屋」はさまざまな形態で残ることが予想され、逆に、不良債権処理を急ぐ銀行や開発業者により、一般の善意の入居者が追い立てられかねません。今回の改定案には、不動産の価格減少行為を禁止する保全処分の強化など「占有屋」対策もありますが、保護制度の廃止による社会的影響は重大であるため、日本共産党は反対しています。
(水)
〔2003・7・16(水)〕