日本共産党

2003年7月17日(木)「しんぶん赤旗」

緒方事務所アンケート47社回答 電気・ガス

生活困窮者の申し出あれば

機械的に停止せず柔軟対応


 電気・ガスなどを止められ餓死する痛ましい事件が相次いだもとで、経済産業省は、電力・ガス事業者にたいし、生活困窮者への供給停止に柔軟に対応すること、自治体福祉部局との連携を強めることを文書で要請しました(昨年四月)。これは東京都生活と健康を守る会連合会(都生連)の要求と運動、日本共産党の緒方靖夫参院議員の国会での質問などが実ったものです。この経過をふまえ緒方議員の事務所は全国の電気・ガス事業者に、とりくみ状況についてのアンケート調査を行いました。

 アンケート項目は、(1)要請文書の社内徹底の状況、(2)生活困窮による滞納者への対応方針、(3)自治体の福祉部局との連携状況など。全国の電力会社、主要な民間ガス会社に送付し、電力九社、ガス三十八社から回答がありました。

 回答によると、各社とも経済産業省の要請文書を受けて、本社や各事業所の営業、経理、集金、電話受け付けをはじめとした担当者に会議や文書でその内容を徹底しています。

 生活困窮から料金滞納した場合の対応については、申し出があれば機械的に供給を停止せず、一定期間支払いを猶予したり分割払いに応じるなど柔軟に対応するとの回答が大半の事業者から寄せられました。

 「個別事情を考慮し、送電停止の延長など、柔軟な対応を行っている」(北陸電力)、「生活困窮の申し出が事実と認定できる場合には、支払い確約書を取り交わすことにより猶予できることとしている」(東京ガス)、「生活困窮者が支払い可能な日まで料金未納による供給停止を延期している」(中部ガス)などです。

 この一年間の具体的対応事例についても、本人や民生委員などと話し合い、年金や生活扶助費支払い日まで猶予したなど、十二社から概要について回答がありました。

内規の改善新設すすむ

 今回のアンケートでは、電力全社が生活保護世帯や母子・高齢・障害者などの福祉世帯、生活困窮世帯への集金・供給についての内規やマニュアルを定めており、そのうち東京電力、中部電力、九州電力の三社では、内容の改善を行ったことが明らかになりました。

 東京電力は、「協力依頼文書受領後、集金マニュアルの見直し(生活保護世帯等の定義が限定的な扱いとなっていたため、より柔軟な対応へ変更)を行った」としています。

 中部電力は、「供給停止にかかる生活困窮者への柔軟な対応についての取り扱いを社内の取り扱い要則に明記した」とし、九州電力は、「社内の内規の見直し(送電停止の柔軟かつ弾力的な対応等)を図った」「生活困窮者に対しては、原則として、面談もしくは電話での接触がとれるまで、送電停止を行わないなど柔軟かつ弾力的な対応を行うこととした」と回答しています。

 これは、緒方議員が参院経済産業委員会で、「内規の生活保護世帯等の対象となる範囲が狭すぎる」と指摘し、平沼赳夫経産相が改善の検討を約束していたものです。

 ガス会社でも、苫小牧ガスと西部ガスが生活困窮者対応マニュアルを定めたとし、八戸ガスが「供給約款に生活保護世帯等についての特別措置の項目を追加した」、東京ガスが「生活困窮者への対応については、社内規定である料金回収業務の取り扱い要領に記載」としています。

福祉部局と連携広がる

 プライバシー保護に配慮しながら、自治体の福祉部局との連携を強化することについても、「市町村の生活担当者会議に出席」(東京ガス)、「福祉部局を訪問のうえ、福祉部局連絡先一覧表を配備」(九州電力)、「市の福祉課と話し合った」(八戸ガス、花巻ガス)、「福祉部局に設けられた連絡会に参加」(北日本ガス)など、各社から前向きな回答が寄せられました。

 多くの事業者が、生活困窮者本人の申し出があった場合などには福祉事務所を紹介するとしています。「福祉事務所のお知らせ」を営業所などに常備することについても、東京電力、中部電力、北海道ガス、東京ガス、東邦ガス、大阪ガス、広島ガスなどから、要望があれば積極的に対応する(すでに対応している)との回答がありました。


餓死の例

 名古屋市千種区の公団住宅に住む無職男性が死亡、介護していた心臓疾患の妻も死亡(二〇〇一年二月)。この夫婦は前年に入居しましたが月八万円の家賃を滞納しており、明け渡し命令が出され、電気、ガス、水道も止められていました。

 北九州市若松区で元中学講師の女性と軽い知的障害のあるその妹が自宅で餓死(〇一年七月)。死後約一ヵ月で発見。栄養失調による餓死で、電気やガスなども止められていました。

 東京都の監察医務院の調査では、二十三区内で栄養失調でなくなった餓死者は十年間(九一年年以降)で百九十二人、大半が五十歳以上で、ガス、電気が止められているケースがあるとしています。


餓死者出さないネットワークを

我伊野徳治・都生連会長の話

 電気・ガス会社が生活困窮者への対応に動きはじめたことは、痛ましい餓死事件を繰り返すなと運動してきた貴重な成果です。各社には、ぜひ柔軟な対応、福祉部局との連携をつらぬいてもらいたい。厚労省は、餓死などをなくすためのネットワークを広げるよう関係機関に指示しています。経産省もそれに協力して、今後も系統的な指導や点検をすすめてほしい。


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