日本共産党

2003年7月17日(木)「しんぶん赤旗」

イラク戦争と世界

第4部 2つの欧州から (5)

“米国の弟分”拒むロシア

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 「プーチン大統領は米国の“弟”になることを拒んだようだ」。ロシア紙コメルサントのアンドレイ・コレスニコフ記者は、先のエビアン・サミットでのロシアの立場をこう表現しています。

 「毎日」十日付が報じた同記者の分析によると、第一の選択はブレア英首相のように“米国の弟”になること。そうすれば米英ロの三国で国際問題のすべてを取り仕切ることができる。それにたいして第二の選択は、「国際社会に容認された文明的な問題解決や国連その他、国際機関の役割の強化を支持すること」です。第二の場合は米大統領の信頼を失うことになるが、ロシアはそちらを選んだというのが同記者の見方です。

米一国主義けん制

 エビアン・サミットに先立ち、ロシア第二の都市サンクトペテルブルクで六月一日に開かれた米ロ首脳会談。ブッシュ米大統領は「ロシアにはイラクに関与してきた長い歴史がある」と強調。イラク復興ではロシアの関与を特別に認める姿勢を示しました。イワノフ外相もロシアが持つイラクでの経済権益保護について「米国から確約を受けた」と認めています。

 ロシアは、推計百二十億ドル(約一兆四千億円)の対イラク債務、同四百億ドル(約四兆八千億円)の貿易契約を抱える主要債権国の一つ。復興事業から排除されれば大きな痛手です。

 国際批判を浴びながらロシアが軍事解決にこだわっているチェチェン問題でも、ブッシュ大統領は会談で、「紛争解決や軍事行動終結の目的」でロシアへの支持を表明し、対米関係での譲歩を引き出したい思惑をのぞかせました。

 そんな揺さぶりを受けてもロシアは米国の一国主義へのけん制をやめていません。イワノフ外相はイラク制裁解除の安保理決議に関し、「以前に国連安保理を迂回(うかい)してとられた行動を合法化するものでは決してない。われわれは国連の中心的な役割を求めており、決議はそうした役割への道を開くものだ」と明言しました。同氏は六月九日にも、企業関係者らとの懇談で、「軍事行動に対する政治的・法的評価は、繰り返すまでもなく明白だ」と反対の立場を強調しました。

多極世界をめざす

 多極世界をめざすロシアの戦略は突如浮上したものではありません。

 プーチン政権は発足直後の二〇〇〇年一月、エリツィン前政権が九七年に策定した旧版を大幅に手直しした新「安全保障概念」を発表。そのなかで旧ソ連圏での影響力確保を優先する旧版の立場を見直しました。

 新概念では、「米国が率いる先進諸国の支配を基礎にした国際関係」を優先する傾向を批判。「国際法の網をくぐって世界の主要問題を処理しようとする一極支配」に対抗し、「多極世界」の構築を対置しました。

 国内世論も無視できません。イラク攻撃開始直後の調査では83%が攻撃に「憤りを持つ」と答え、「攻撃支持」はわずか2%。来年三月の大統領選で再選を狙うプーチン氏の支持率はさらに高まりました。

 イワノフ外相は六月十八日、プノンペンで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)に出席後、ロシア人記者らと会見。

 中国、インド両国との協力関係に触れるなかで「国連憲章や国際法の尊重、政治対話を通じた国際問題の解決、多極的で公正な国際秩序の構築でわれわれの立場は一致している」と述べました。 (モスクワで北條伸矢)(第4部おわり)

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