2003年7月19日(土)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 公立図書館や公民館などの管理を、営利目的の民間株式会社にも委託できるようになるようですが、そんなことをして住民サービスはだいじょうぶですか。(埼玉・一読者)
〈答え〉 地方自治体の図書館や公民館、児童館、福祉センターなどは、地方自治法では、「住民の福祉を増進する目的」で、住民の「利用に供する」ために設立された「公の施設」(二四四条)と位置づけられています。そのため、管理運用上▽正当な理由なく住民の利用を拒んではならない▽不当な差別をしてはならない─などの定めがあります。
もともとこれらの施設の管理は、住民に責任を負う自治体が直接行うべきものであるため、委託する場合も、土地改良事業で設立される土地改良区などの「公共団体」や、農協・生協・自治会などの「公共的団体」に委託先が限定されていました。民営化を進める自民党政治のもとで、一九九一年に自治体と企業が出資する「第三セクター」にも委託できるように改悪されましたが、そのさいも“自治体の出資比率が二分の一以上”などの条件が課されていました。
ところが、今年六月に地方自治法が改悪され、委託先についての条件がなくなりました。これまでは認められていなかった営利目的の株式会社も、自治体の公共施設の管理事業を行えることになります。
これは、株主への利益配当が主要な目的である株式会社に、税金で造られた施設の管理を委ね、自治体から支払われる委託費や住民の利用料金から利益をあげる機会を提供することを意味します。いまでも第三セクターなどへの委託事業で、サービスの低下や労働条件の切り下げなどが起きていますが、株式会社の参入はこうした問題を拡大しかねません。会社が経営破たんすればサービスの途絶や新たな住民負担の危険も生じます。公務員の義務規定なども直接には会社従業員には及ばず、施設利用者の個人情報が保護されるのかどうかも問題です。
(博)
〔2003・7・19(土)〕