2003年7月20日(日)「しんぶん赤旗」
初めに派兵ありきの国会審議は認めない−−イラク特措法案に危機感をもつ中東問題専門家、憲法・国際法学者、イラク支援に携わるNGO関係者らは十九日、東京・早稲田大学で「市民公聴会」を開催。集まった市民約百人が専門家らに問題点を聞き取りました。
「法的に『占領』とは戦争が継続中のこと」と小沢隆一・静岡大学教授が指摘。イラク取材をしてきたジャーナリストの志葉玲さんは「日本で報道される以上に米兵からもイラク人からも、殺し合いによる死者がでている」と「戦闘状態」の現実を報告します。
「自衛隊が来れば殺害されるだろう」とアラブの友人からのメールを長沢栄治・東京大学教授が紹介しました。
「自衛隊員がかわいそう」という会場からの声に、志葉さんは米軍に逮捕された時に若い米兵から聞いた話で答えます。「イラク人を不当に捕まえ縛りあげていた彼らは『解放のためにきたのにイラク人には憎まれている』と真剣に悩んでいた。自衛隊員も同じ気持ちになるのでは」
NGO関係者らはイラクの現状をスライドで説明します。不発弾が転がる荒廃した土地、耐乏の国民生活、医薬品が不足する医療機関……。「自衛隊派兵でNGO活動はどうなるか」という会場の問いに、日本国際ボランティアセンターの高橋清貴さんは「自衛隊の存在でイラク人に不信感をもたれ、日本のNGOの人道支援はやりにくくなる。私たちは自衛隊の護衛を求めない」といいきります。
「特措法案の目的の第一に掲げられている『人道支援』は“見せ金”で、本音は『安全確保』という名の米軍への兵たん支援」と小沢さん。
「市民公聴会」を呼びかけた三輪隆・埼玉大学教授は「ここに集まった声を大きくし、派兵反対の世論をつくっていこう」とのべました。