2003年7月21日(月)「しんぶん赤旗」
二十日放送のNHK「日曜討論」で、日本共産党の市田忠義書記局長は、会期末を迎えた通常国会について、政治とカネ、イラク特措法案、小泉内閣の経済政策などの問題で各党代表と討論しました。他党の出席者は自民党・山崎拓幹事長、民主党・岡田克也幹事長、公明党・冬柴鉄三幹事長、自由党・藤井裕久幹事長、社民党・福島瑞穂幹事長、保守新党・二階俊博幹事長。司会はNHKの山本孝解説委員。
最初に、秘書給与詐取事件で社民党の辻元清美前衆院議員が逮捕されたことについて、福島氏が「党としては申し訳ない。逮捕は青天のへきれきだ」とのべました。
これに関連して、冬柴氏が「ある政党は全秘書の給与を一つの口座に振り込ませ、秘書には一部しか渡していない」などと発言。市田氏は次のようにのべました。
市田 ある政党とはどこのことか知らないが、わが党にかんしていえば、秘書給与はすべての秘書に全額支給されて、自主的にその一部を秘書の共同の経費として、たとえば調査活動だとか出張費のためにプールしているということであって、それぞれ自主的に寄付している。それは、秘書には寄付する権利があるわけですから。
社民党の辻元さんの件については、秘書としての実態がないのに、名前だけ登録して、それで受け取った給料を共同の経費に充てたという疑いがかけられている。これが事実だとすれば、その責任は免れないと思います。ただ、なぜこの時期かという話もありましたが、こういう問題を捜査当局が担当する時に、公正と政治的中立の原則であたることが求められると思います。
政治資金規正法の改正問題に話題が移り、山崎氏が与党の「改正」案について「審議を議運(議院運営委員会)で主張したが、委員会に付託してもらえなかった」と事実をゆがめて野党を批判。岡田氏は、政党支部あたりの献金上限を百五十万円とし、献金者(企業)名の公開基準を年間五万円超から二十四万円超に引き上げるという与党案を「とんでもない法案だ」とのべました。
司会者に「公明党は公開基準引き上げに反対だったのではないか」と聞かれ、冬柴氏は「原則五万円は動かさない」「振り込みにした」などと言い訳に終始。「この案で企業献金のあり方は抜本的に見直せると思うか」との司会者の問いに、市田氏は次のように答えました。
市田 まったく見直せないですね。だいたい問題の発端になったのは、公共事業の口利きを自民党の議員が中心になってやって、その見返りで献金をもらう、あるいは献金をもらったから公共事業の口利きをやってやる。これは鈴木宗男氏がそうだし、前参院議長の井上(裕)さんもそうだし、加藤紘一自民党元幹事長もそうです。
したがって公共事業受注企業からの献金を少なくとも禁止する必要がある。これは総理も国会で検討する必要があると言っていた。ところがその与党案をみると、公共事業受注企業からの献金規制なんて一言もないわけです。
そして年間百五十万円の上限と書いていますが、いま小泉内閣の閣僚が企業・団体献金をもらっている総額は二億八千万円なんです。百五十万円を超えて引っかかるというのはそのうちわずか八件しかないんです。それほど分割されている。政党の支部を増やせばそういうことになりますから。
冬柴さんは先ほどおっしゃったが、振り込みにしろ何にしろ、二十四万円までは明らかに(公開)しなくていいとしたことは事実なんですよ。透明性とかなんとか言うが、名前をいっさい明らかにしなくてもいいということにしたわけですから、これまで公明党さんがおっしゃっていたこととも違うと私は思います。
これに対し冬柴氏は発言を求めましたが、まともな反論はできませんでした。政治資金規正法改正の審議について、司会者が「今国会では時間がなさそうだ」とのべ、市田氏は「事件が起こっているのに、長期にほうっておいたのは与党だ。野党案はもっと早く出ている」と指摘しました。
イラク特措法案について与党側が「ほとんど審議を終了した段階だ」(山崎氏)と採決を主張。市田氏は、イラクが大量破壊兵器を保有していると断定した具体的根拠を示せない政府の国会答弁について、次のようにのべました。
市田 よくもこういう詭弁(きべん)が使えるなと。ああいうことで国民がごまかせると思ったら、国民からきびしいしっぺがえしを受けると思うんです。たとえばラムズフェルド(米国防長官)自身が最近、「戦争前に劇的な大量破壊兵器があるという証拠はなかったんだ」と言い始めてますよね。アメリカ、イギリス本国で大問題になっている。
小泉首相は「疑い」じゃないんですよ、「大量破壊兵器を現に保有している」ということを断定された。ということは、イラク戦争の一つの大きな「大義」であったものが、根底から崩れたわけです。もともと国連憲章違反の先制攻撃でわれわれは反対ですが、政府やアメリカやイギリスが根拠としていた土台が崩れたわけですから、しかもそれに付き従っていったわけですから、これについてはこの討論会で私が何回言っても、与党側から全然解明はなかった。そのことについて非を認めるべきだと思います。
小泉内閣の経済政策に話題が移り、山崎氏が「国民のために歳出の見直しをやり、不良債権(処理)をやる。究極は国民のためで、(国民に)冷たいということはない」と発言。市田氏は次のように批判しました。
市田 山崎さんが「冷たくない」とおっしゃったが、日本の経済の六割を占める個人消費、国民の暮らし、中小企業を応援するということがまったくないと思うんです。小泉内閣になって二年間で失業者は四十万人増えています。中小企業の倒産は三万六千件です。株価は一時半値、いまでも一万円割れです。
「不良債権の処理」を急げば、人も資金も物も新しい分野に移動し、経済も活性化すると(言ったが)、実際は資金の移動などまったく起こらずに倒産と失業が増えて、銀行の貸し出しも大銀行だけで三十六兆円減っているわけです。
しかも小泉内閣になって、発足当時と比べて「不良債権」は二兆円増えているわけです。「痛みはしばらくがまんしてもらう」とおっしゃったが、最初は改革に伴う痛みは「二年、三年」とおっしゃっていたんです。
ところがいまや「四年待て」と、いつの間にやら勝手にそういうことを言い出して、「セーフティーネットがある」と言いますが、失業給付を減らして、労働者派遣法を改悪して、いわば自由に首切り勝手の労働者をたくさんつくる方向に行っているわけですから、やるべきことをやらずに、やってはならないことをやってきて、国民の暮らしと経済を大変な状況に陥れたのが小泉「構造改革」の本質ではないか。やはり暮らしを応援する、中小企業を応援する、そこに軸足を置いて経済の再建を勝ち取るということが大事ではないかと思います。