2003年7月21日(月)「しんぶん赤旗」
【メキシコ市で菅原啓】中米・カリブ海地域ではこれまでに四カ国が米国からの要請を受け、イラクへの軍隊派遣を決定しました。米国との協調関係を優先して、危険な戦場に兵士を送り込もうとする政府の決定にたいし、各国では野党や知識人から厳しい非難の声があがっています。
ドミニカ共和国のメヒア政権は約三百人の兵士を人道支援や治安維持の任務でイラクに派遣すると発表。同国は、十億ドルの支援融資をえることで国際通貨基金(IMF)と合意したばかりです。
派兵決定の背景には、IMFに強い影響力を持つ米政府の意向があったことは明白です。地元紙ナシオナルのコラムニスト、ナルシオ・イサ氏は、今回の決定について、メヒア大統領が「(米国の)植民地の統治者を続ける新たな条件」を申し出たものだと、米国追随の態度を批判しています。
十六日付の各紙は、ドミニカ共和国出身の米軍兵士がイラクで戦死したとのニュースを大きく報じました。イサ氏は、米英軍によって占領されているイラクで占領への抵抗がわき起こっていることを指摘。「ドミニカや中米・カリブの軍部隊がゲリラの攻撃の標的にならないと誰が保証できるのか」と派兵の危険性を訴えています。
中米では、ホンジュラス、ニカラグアに続き、エルサルバドルが先週、三百六十人の派兵を決定しました。同国国会では、与党・民族主義共和同盟など親米政党が多数を占め、フロレス大統領の発表した派遣命令の承認を強行したものです。
法案に最後まで反対した野党第一党ファラブンド・マルティ民族解放戦線(FMLN)党のウォルター・ドゥラン国会議員は、危険なイラクに派遣された自国軍部隊が問題に直面すれば、フロレス大統領の責任として追及する立場を明らかにしています。
メキシコの政治評論家ペドロ・ミゲル氏は、四カ国の派兵決定について、「国際社会がイラク制圧に熱狂的に参加していることを世界に知らしめようとする」など、米国の意向にそったものだと分析しています。