2003年7月22日(火)「しんぶん赤旗」
政府・与党は二十二日にも、自衛隊をイラクに派兵するイラク特措法案を参院外交防衛委員会で採決する構えです。法案をめぐり小泉純一郎首相は詭弁(きべん)や、でたらめ答弁を繰り返しています。採決の強行は、将来に重大な禍根を残すことになります。(竹下岳記者)
「疑惑があるということから、私は(イラクに大量破壊兵器は)あると言った」「だから、私はあると思った」
十八日の衆院予算委員会。小泉純一郎首相は、イラク戦争を支持した際、みずからのメールマガジンで、イラクが大量破壊兵器を「保有」すると断定した根拠を問われ、こう述べました。
日本共産党の志位和夫委員長が六月十三日の党首討論で追及して以来、首相は「フセインが見つからないから、フセインはいなかったと言えるのか」という詭弁を持ち出すだけで、「保有」を断定した根拠を示せませんでした。
この日、首相は、大量破壊兵器の「疑惑」があったから「あると思った」と、主観的な判断に過ぎなかったことを認めたのです。
七千人以上といわれるイラクの一般市民が殺された戦争を「(大量破壊兵器が)あると思った」という理由で支持したのなら、ことは重大です。その責任をうやむやにしたまま、無法な戦争の軍事占領を支援する法案を強行することは、到底許されません。
「米英以外に四十数カ国が軍隊を派遣してイラクの復興支援にいそしんでいる」
首相はこう繰り返し、自衛隊派兵の「正当性」を主張してきました。
しかし、首相のいう「四十数カ国」はでたらめで、外務省の調べでも、現在、「軍隊を派遣しているのは米英を合わせて十六カ国」です。
政府は、自衛隊派兵の根拠として国連安保理決議一四八三をあげていますが、同決議は加盟国に軍隊の派遣を要請したものではありません。首相自身も「(一四八三は)軍隊を派遣しろとも言っていない」(九日、参院連合審査会)と認めています。
さらに、同決議は、米英軍の軍事占領に合法性も正当性も与えていません。仏独ロなどが派兵を拒んでいるのは、そのためです。
首相は「米英の武力行使を支持しなかったヨルダン、サウジアラビア、カナダも軍隊を派遣しようとしている」(九日、参院連合審査会)とも述べています。
しかし、十八日の参院外交防衛委の公聴会で、公述人の栗田禎子・千葉大助教授は、ヨルダンとサウジアラビアの在日大使館が「軍隊派遣ではない」との見解を示していることを紹介。ヨルダン大使館は、外務省の軍隊派遣国リストに挙げられていることを「何かの間違い」と否定したことを明らかにしました。
しかも、法案で自衛隊の支援対象になっている「治安維持活動」への派遣となると、外務省の調べでも、現在、米英以外にはリトアニアとデンマークだけです。
イラクでは、軍事占領に対する国民の反発、抵抗が広がりつつあります。それに乗じて、フセイン政権残党が米軍への攻撃を強めています。
そのなかで、政府は、フセイン政権残党の掃討作戦や、軍事占領に反対するイラク国民への武力鎮圧を自衛隊が支援することも「全面的には否定されない」(石破茂防衛庁長官、十七日、参院外交防衛委)としています。自衛隊が軍事占領の加担者とみなされ、イラク国民の反発と抵抗を受け、砲火を交える事態も起こりかねません。法案の強行は、国連中心のイラク復興を願う世界の流れにも逆行するものです。