日本共産党

2003年7月22日(火)「しんぶん赤旗」

“おーい、おれを撃ってくれ。家に帰りたいんだ”

米軍兵士、家族にえん戦広がる

終わり見えないイラク占領


 米英軍のイラク占領が長期化する中で、兵士への襲撃も連日のように発生し、米兵の死者数はついに湾岸戦争時を上回る百五十一人(二十日付ロイター電)に達しました。前線の兵士や本国の家族らは終わりの見えない占領に失望感と怒りを募らせています。米英のメディアもその様子を一斉に伝え始めています。

◆失望 

 アビザイド米中央軍司令官は十六日、イラクに展開する米第三歩兵師団の派遣任期を当面延長することを明らかにしました。

 これまで同部隊の兵士らは七月か八月までに帰国できるという説明を受けてきました。しかしイラク国内が安定しないことや、一万人以上の派兵を米国から求められていたインドが派兵を拒否するなど代替部隊の補充が遅れていることから帰国日程は延期に延期を重ね、今回の決定で四度目の延期となりました。

 ロイター通信は、首都バグダッド西方の都市ファルジャ近辺に駐屯する米兵が、同決定を知ってぼうぜん自失する様子を伝えました。

 「今までの人生で感じたことがないほどのレベルの失望を感じた。ノックアウトのパンチをくらったみたいだ」(エリック・ライト軍曹)

 「数カ月で帰国できると三回も聞かされていたのに。今はこんなことを発表するのに適した時ではない。われわれはやる気を失った」(クリス・グリシャム軍曹)

 第三歩兵師団は昨年九月から湾岸に展開しており、七月十五日付ロイター電によると同部隊からはこれまでに三十七人の犠牲者が出ました。

 兵士の間では、負傷兵となって兵役を免除されてでも帰国したいという思いが沸いているといいます。エリック・ライト軍曹は英BBC放送(電子版)に対し、軍隊内の雰囲気を次のように説明します。

 「われわれは力尽きた。帰国できるよう負傷することを望む者が出るほどに、心理的にも肉体的にも疲労困ぱいしている。おーい、おれを撃ってくれ。家に帰りたいんだ、ってね」

◆不信 

 米軍当局への不信感も増大しています。BBC放送(電子版)は「兵士らは、彼らの将来についての約束が何度も破られたことで、もはや軍を信頼できないと率直に語っている」と述べました。

 米国のABC放送は、第三歩兵師団に所属する米兵へのインタビューを実施。同放送は兵士の間でブッシュ大統領やラムズフェルド国防長官らの人気が落ちていると指摘。実際、質問にこたえた米兵らは不信感を異口同音に語りました。

 ABC放送(電子版)のテキストによると、ある米兵は「もしラムズフェルド国防長官がここにいれば、彼には辞任を求めるだろう」と強調。別の兵士は「なぜわれわれが依然としてここにいるのか。なぜわれわれがまだイラクにいるのかさっぱり分からない」と続けました。

 別の一等兵も「私の軍隊への忠誠心を著しく失わせるものだ。つまり、彼らがなにを言おうともう本当に信じない。来週出発だと言ったとしても、彼らを信頼しはしない」と不信感をあらわにしています。

 フィリップ・ベガ軍曹は「一番早く帰国する方法はバグダッド経由だと開戦前に聞かされ、われわれはそれを実行した。でもわれわれは依然としてここにいるんだ」と強調。軍が命令をころころと変えると兵士の士気を維持することが困難だと打ち明けました。

◆動揺 

 米兵の死亡者数が急増していることから、本国で帰国を待ちわびる家族の間にも、懸念と動揺が広がっています。

 BBC放送は、ゲリラ戦の続くファルジャに駐屯する夫の帰国を待つナネット・オニールさんの様子を伝えています。ナネットさんは「(イラク戦争は)たいへん長く、もっと大変な仕事だということがわかった」と語りました。同放送は「オニールさんや他の兵士の妻たちにとって、(イラク情勢を伝える)夕方のニュースは毎晩の苦難となっている」と指摘しました。

 ABC放送がインタビューしたテリー・ジルモア軍曹は、本国にいる妻のステイシーさんと電話で話した時の様子を次のように語っています。

 「帰国の延期を彼女に伝えたら彼女は泣き始めたんだ。僕ももう少しで泣き始めるところだった。心臓がはりさけんばかりだったよ。もうすぐ帰国するといった後に、どうしてわれわれをここにとどめておけるのか理解できない」

 ABCの番組に出演したステイシーさんは、米軍はイラク戦争後への備えが不十分だったと指摘、「私が知っているのは、兵士の士気は低く、彼らは耐えているだけだということです」と述べました。(島田峰隆記者)


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