2003年7月24日(木)「しんぶん赤旗」
二十三日に行われた日本共産党の志位和夫委員長の小泉純一郎首相に対する党首討論(大要)は次のとおりです。
志位和夫委員長 政府・与党は、明日にもイラク派兵法案の委員会採決を強行の構えでありますが、「全土でゲリラ戦争」という状況にあるイラクへの自衛隊派兵は、憲法違反の武力行使となることはあまりにも明りょうであります。
くわえて、私も党首討論で二度取り上げましたが、総理がイラク戦争支持の最大の理由とした大量破壊兵器はいまだ発見されず、米英による軍事占領への支援が不法かつ不当なものであることも、いよいよ明りょうです。
わが党は、この法案に対する反対を貫き、野党のみなさんとも協力して、廃案に追い込むために最後まで力をつくすことを、まず冒頭申し上げておきます。(拍手)
志位 きょうの党首討論では、二十一世紀の日本の未来にかかわる重大問題の一つとして、私は、若者の雇用問題についてとりあげたいと思います。
いま雇用をめぐる状況は、戦後最悪となっております。一家の家計を支えている中高年の失業問題はもちろん深刻でありますが、若者の雇用問題は、日本社会の存続自体を危うくさせる重大な問題をはらんでいると思います。
大学卒業者の就職率を見ますと、57%まで下がっています。大卒就職率は、あの七〇年代の石油ショックのさいにも七割を割ったことがなかった。まさに、かつて経験したことのない異常事態です。就職活動に疲れきった若者から、「自分が社会にとって不要だ、人間として否定されたつらい気持ちになる」。こういう声が寄せられることに、たいへん胸が痛む思いがいたします。
志位 私がそのなかで注目したのは、内閣府がこの五月に、平成十五年版「国民生活白書 デフレと生活――若年フリーターの現在(いま)」というリポートを出していたことです。これは、若者の雇用問題に、政府としてはじめて分析としては的確な分析をくわえたものとして、注目して読みました。
この「白書」では、フリーターとよばれる、パート、アルバイト、派遣労働など不安定な仕事を余儀なくされている若者が、一九九五年の二百四十八万人から、二〇〇一年には四百十七万人へと、急激に増加していることをまず重視しています。
さらに「白書」では、なぜフリーターが急増したのか、原因はいったい、若者側にあるのか、企業側にあるのか――。この問題について、フリーターのうち「正社員になりたい」という希望を持っている人の割合が七割を超えていることも示しながら、こう結論づけています。
「九〇年代後半以降の大幅なフリーターの増加要因としては、どちらかといえば企業側の要因が大きいと思われる」
これは注目すべき分析です。さらにこの「白書」では、大企業ほど、正社員の新規採用を抑え、パート、アルバイト、派遣に置き換える動きが顕著になっていることも指摘しています。
これは、「白書」から作成したグラフです(パネルを示す)。一九九五年と二〇〇一年とを比較しまして、若者の正社員数の増減(を示したもの)です。青い棒は中小企業でありますが、この不況のなかでも三万人増やしています。赤い棒は大企業でありますが、百八万人も減らしています。
今日の若者の雇用問題を考える際に、異常な就職難とか、フリーターの急増とか、この事態をつくった主要な原因は企業側にある。とくに大企業の責任は重いのではないでしょうか。
そこで総理にうかがいたい。政府として、大企業に対して若者の雇用を増やすよう、本腰を入れて働きかけを、いまやるべきじゃないですか。いかがでしょうか。端的にお答えください。
小泉純一郎首相 このフリーターの増加に対して、やはり政府としても真剣に取り組まなければならないということで、いま志位さんが言われたように、「白書」に共産党のみなさんから評価されるような「白書」を出したわけでございますが、確かにこれは看過できない大事な今後の問題だと思います。
大企業にもっと若者を採用せよということでございますが、これは本質的に実体経済を良くしていくことによって、雇用を増やす、これが大事だと思いますが、いま、なぜフリーターが多くなったのか。職業訓練、あるいは教育、いろいろな要因が考えられます。
ご本人の意識もかつての若者の意識といまの若者の意識とは違います。また、終身雇用から派遣社員というそれぞれの分野で活躍している会社も出てまいりました。企業もリストラに励んで、いかに人件費を節約しながら業績を上げるかという会社側の理由もあると思います。一様ではないと思います。
そういう点を総合的に取り上げて、仕事の重要さ、就業することの価値といいますか、勤労意欲を持つことが、いかに本人にとって大事か。そういう面からも今後取り上げていく必要があるんじゃないか。ということで、私は、学校教育も、高校・大学だけじゃなくて、むしろ小・中学校から仕事の重要性を理解させるような対策も必要じゃないかと。(委員長「総理、簡潔にお願いします」)
いま大企業に対しても、私どもは、できるだけ雇用について、政府と使用者側と労働界、一体になって取り組むような対策を厚労大臣中心にとっているわけでありますので、こういうご指摘の点も踏まえて、今後雇用対策にいっそう力を入れていきたいと思います。
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志位 私が聞いたのは、大企業に対して、雇用を増やすための働きかけをやるべきだということを聞いたんですが、そのことについてお答えがなかったのは、本当に問題だと思います。
政府の分析は正しくても、処方せんはだめなんですよ。ここに問題がある。
この問題に、いま本腰を入れないとどういうことになるか。それも、この「白書」には出ておりますよ。
フリーターの急増がどういう事態を招くか。それについて、(「白書」は)「フリーター自身が、不利益を被ったり、不安を感じたりする」、「日本経済の成長を阻害する」、さらには「社会を不安定化させる」、「少子化を深刻化させる」(とのべています)。まさに日本経済の再生産、あるいは日本社会の再生産、存続、これを不可能にするような事態になっている。
ですから私は、大企業による社会的責任が必要だと言いました。
この問題を解決しようと思ったら、解決の方向は明りょうです。さきほど私は、大企業が正社員をうんと減らしていると言いました。しかし、労働時間は増やしているんですよ。長時間労働、すごいです。正社員の五人に一人は、週六十時間、年間三千時間を超える労働時間です。この長時間労働にメスを入れる。そして「サービス残業」を一掃する。サービス残業を一掃しただけで、第一生命経済研究所によりますと、八十四万人の雇用が増やせますから、そういうことを、本気になってやるべきだと。もう一回お答えください。
首相 労働時間の問題につきましても、政府としては、各企業に対して、できるだけ、政府の指導に沿うように、対策を立てるように、常に督促をしております。
志位 若者が夢と希望を持てるような社会を作ることこそ、政治の責任であることを指摘して質問を終わります。
大企業(従業員規模五百人以上の事業所)でサービス残業を新規雇用に振り替えた場合の84万人の雇用創出効果
労働者本人の申告をベースとする総務省「労働力調査」の労働時間と、事業所の賃金台帳をベースとする「毎月勤労統計」の労働時間の差をサービス残業試算値として算出。
従業員五百人以上の事業所では、二〇〇二年ベースで年間百九十二時間、サービス残業比率は9・3%となります。このサービス残業時間がゼロとなったときの雇用創出効果を大企業の常用雇用者総数(千百八十四万人)と「労働需要の労働時間に対する弾性値」(0・769)から計算すると、八十四・三万人の常用雇用が生み出されます。
同データは、志位和夫事務所の問い合わせに対し、第一生命経済研究所から提供されたもの。