2003年7月24日(木)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 銀行保有株の買い取りで、与党が銀行の売却時拠出金を廃止しようとしているようですが、どういうことになりますか。(長野・一読者)
〈答え〉 銀行保有株式の株価下落による損失を国民に肩代わりさせるねらいで、昨年から、銀行等株式取得機構による銀行からの株買い取りが進められています。二〇〇一年に与党らが成立させた銀行株式保有制限法によるものです。取得機構の買い取りは、政府保証のつかない一般勘定と政府保証のつく特別勘定という二つの枠がありますが、今年春までに買い取られた株式、約二千億円のほとんどが特別勘定です。
現行の制限法では、銀行が特別勘定で機構に保有株を買い取らせるときは、売却額の8%相当額を取得機構に拠出することになっています。この売却時拠出金は取得機構が株式を市場に売却するときに予想される、株価値下がり損失の補てんにあてられるものです。拠出金を上回る損失は、政府保証を通じて国民の税金で穴埋めされます。
今年五月、与党三党は、この拠出金を廃止する法案を国会に提出しました。今年春先の株価の低迷をうけ、買い取り制度の見直しを要求していた銀行業界にこたえたものです。今年三月末時点で、機構が買い取った株の評価損は三百五十億円です。拠出金が廃止されれば、今後買い取られる株式のこうした損失は、丸ごと国民の税金で穴埋めされることになります。買い取り制度を導入するとき、国民の負担を極力おさえるとして設けた歯止めも無造作に投げ捨てようとする、政府・与党や大銀行のモラルハザード(倫理欠如)は深刻です。
また与党案は、銀行株の株価安定策も強化します。銀行に株持ち合いを解消された事業会社が保有銀行株を機構に買い取らせる仕組みがあり、銀行から機構が買った額の「二分の一」までとの上限が定められていますが、与党はこの上限も銀行保有株と「同額」に引き上げようとします。事業会社からの買い取り増で、国民負担はさらに増えます。
(清)
〔2003・7・24(木)〕