2003年7月27日(日)「しんぶん赤旗」
政府が年金積立金の株式運用などで二〇〇二年度、三兆円もの赤字を出しました。一方で、国民年金の保険料未納率が37%にものぼることが明らかになりました。
いずれも、年金制度をめぐる深刻な事態を改めて示すものです。
政府は、「少子高齢化」を理由に将来年金財政が破たんする恐れがあるといって、国民に保険料の引き上げと給付の切り下げを連続的に押し付けています。年金を受け取る年齢も、若い世代ほど先送りされています。今年度からは現に年金を受給しているお年寄りの給付切り下げも強行されました。
「いったい私の年金はどうなるのか」。逃げ水のような公的年金の改悪に、現役世代も年金受給世代もやりきれない不安を募らせています。老後生活と将来設計を保障するにふさわしく、年金への信頼をどう取り戻すのかが、いま問われています。
ところが、政府はそれにまともにこたえることはしないで、国民の年金不信のもとになっている「給付減・負担増」を重ねる「改革」を推し進めようとしています。
それに加えての、積立金運用の巨額の損失です。株式などの運用で収益をあげ、保険料引き上げを抑制するといってきましたが、結局は利益をあげるどころか赤字を出してしまいました。運用での累積赤字は六兆円にふくれあがりました。
こんなことを放置することは許されません。積立金は、国民から徴収した保険料が原資です。運用で減らしては元も子もありません。リスク(危険)のある資金運用はいますぐやめるべきです。
もともと日本の公的年金の積立金は欧米諸国に比べ、ため込みすぎが問題になっています。
二〇〇一年度の積立比率(前年度末積立金を当年度の給付費などの支出で割ったもの)は厚生年金で五・九年分、国民年金で五年分です。欧米諸国は数カ月分から多くても一年余分です。世界に例がないほど突出した年金積立金のため込み方式を見直すことこそ、政府は真剣に検討すべきときではないでしょうか。
巨額の積立金を計画的に取り崩し、給付と保険料軽減にあてれば、積立金の株式運用などの必要性そのものが消えるはずです。
国民年金の保険料未納率が急増していることも重大です。主な要因が、保険料免除の基準を厳しくしたことに加え、高すぎる保険料と雇用の悪化にあることは明らかです。
失業で厚生年金から国民年金に移った人やフリーターの多い若年層に未納者がとりわけ多いのは、そのためです。
厚生年金の二〇〇一年度の財政収支が初めて赤字になったことも見過ごせません。保険加入者が一年間で六十一万人も減ったからです。
将来に希望がもてる年金制度にしていくためには、くらし応援と雇用拡大の経済政策への切り替えがどうしても必要です。
給付減と負担増の改悪では、絶対に国民の信頼が得られないことを政府は肝に銘じるべきです。
年金制度の立て直しに不可欠だとされている、基礎年金の国庫負担を三分の一から二分の一に引き上げる問題を先送りすることも絶対に許されません。
無駄な大型公共事業などを見直し、社会保障を予算の中心にすえるという、私たちの提案を国民とともに要求していきたいと思います。