2003年7月27日(日)「しんぶん赤旗」
政府・与党はイラク特措法の成立を受け、イラクへの自衛隊派兵の具体化に乗り出すことになります。しかし、それをむりやり進めることは、憲法違反の自衛隊派兵の矛盾をいっそう深めることになります。
同法は、自衛隊が実施する活動として「安全確保支援活動」を定めています。
「安全確保支援活動」とは「国際連合加盟国が行うイラク国内における安全及び安定を回復する活動を支援するために我が国が実施する措置」のこと。「イラク国内における安全及び安定を回復する活動」とは、国連安保理決議一四八三で米英占領軍がおもに実施すると定められており、米英軍によるイラク軍事占領への支援が最大の狙いです。
政府は、米英軍による旧フセイン政権残存勢力の掃討作戦や、イラク国民の軍事占領にたいする反対・抵抗運動を武力で鎮圧することまで支援の対象に含まれ得るとしています。
具体的な活動内容としては、武器・弾薬を含む物資や武装兵の輸送、水や食糧の補給といった兵たん支援を規定。自衛隊は、占領軍と一体となった軍事活動を実施することになります。軍事占領に反対・抵抗するイラク国民からは攻撃の対象になるのです。
これにたいし同法は、「正当防衛」を口実に武器の使用も認めています。イラク国民と砲火を交えることにもなりかねません。
政府は今後、自衛隊員を中心とする専門調査団を数次にわたって派遣。これを受けて、イラク特措法にもとづき、活動の種類や実施区域の範囲、部隊の規模・装備、派遣期間などを定める「基本計画」づくりに入ります。
「基本計画」の閣議決定を受けて、同計画にもとづき、具体的な活動内容やその実施区域を指定する「実施要項」を作成。そののちに、自衛隊は実際に派遣されることになります。
政府は、実施区域の指定にあたっては、(1)その地域にニーズ(必要)がある(2)自衛隊が活動できる地域として同法が定める「非戦闘地域」である―という要件を満たすことが必要だとしています。
しかし、イラクはいま「全土でゲリラ戦」(アビザイド米中央軍司令官)といわれる事態になっており、「非戦闘地域」の虚構性が明らかになっています。ブッシュ米大統領の戦闘終結宣言以降も、一日一人のペースで米兵が殺害されており、死者の数は一九九一年の湾岸戦争を上回っています。
こうした事態のなかで、政府はこれまで検討していた米占領軍支援中心の派遣計画を白紙に戻し、当面は人道復興支援を中心にすることを決めたと、動揺ぶりが報じられています。
「十月解散―十一月総選挙」が有力視されるなか、政府・与党内では「選挙前に自衛隊に死者が出たりすれば選挙はたたかえない」という声があがり、当初予定されていた秋の派遣を選挙が終わるまで先送りするとの報道もあります。
イラク戦争の最大の口実だった大量破壊兵器はいまだに見つからず、戦争と軍事占領の無法性、不法性もますます明らかになっています。派兵を許さないたたかいはこれからです。