2003年7月27日(日)「しんぶん赤旗」
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日本共産党の小泉親司参院議員が、二十六日未明の参院本会議で行ったイラク特措法案に対する反対討論(大要)は次の通りです。
私は日本共産党を代表して、イラク特措法案に対する反対討論を行います。反対の理由の第一は、「戦闘地域」と「非戦闘地域」の区分ができるという虚構のもとで、自衛隊を戦地に派遣する危険極まりない法案だからです。
参院の審議のさなかにも、イラク現地の情勢は悪化の様相を呈しており、まさに泥沼化しています。ロケット弾や仕掛け爆弾、自爆テロなどによる米軍兵士の犠牲も増大の一途をたどり、イラク戦争による米軍の死亡者は、ついに湾岸戦争を上回る百五十五人にのぼっています。十六日、アビザイド米中央軍司令官が、「米軍はイラク全土で典型的なゲリラ戦争を実施している。それは戦争である」とのべていることでもはっきりと示されています。
これら一連の事態は、法案でいう「戦闘地域」・「非戦闘地域」がまったくの虚構であり、たとえ「非戦闘地域」でも決して安全とはいえない状況にいたっていることは明白です。
それにもかかわらず政府は、「非戦闘地域」を設定し、その「非戦闘地域」に自衛隊を派兵するのだから大丈夫だと、こわれたテープレコーダーのように繰り返すだけです。こうしたなか、元防衛庁教育訓練局長だった小池清彦加茂市長は、全国会議員に書簡を送り「イラク特措法の考え方は詭弁であり、強弁であります」「イラク特措法が成立して、私が激励した人たち、(自衛隊員が)招かれざる客としてイラクに派遣されて、万一命を落とすことになったら、私は今度は自衛隊入隊者激励会において何と申し上げたらよいのでしょうか。私は言葉を知りません」と指摘しています。このようなことを現実のものにしてはなりません。
理由の第二は、この法案が、自衛隊によるイラクの復興支援ではなく、米英占領軍を支援する以外のなにものでもない、憲法に違反する交戦権行使の法案だからです。
イラク特措法案は、米英占領軍の治安維持活動への自衛隊支援を定めています。これは、国連決議でももっぱら、占領軍の任務とされているものです。このような支援活動が、国際的にもイラク国民からも占領軍と一体の活動と見られることは明白です。
占領軍は、バース党の残党などを掃討する攻勢的な軍事活動を展開しています。イラク国民の民家を急襲し、強圧的な捜索と攻撃、パトロールと武装を解除させるための作戦です。この作戦によって、米軍がイラク国民と敵対関係に陥っていることも報告されています。政府はこのような作戦も支援の対象としており、これらが占領軍と一体の活動と見られることは当然です。
しかも、これらはフセイン前政権の残存勢力の掃討にとどまりません。イラクではいま、“仕事をよこせ”などの住民のデモ、抵抗闘争が起きています。米軍はこのデモに発砲・鎮圧するという暴挙まで行っています。
ところが石破防衛庁長官は、イラクの国民を弾圧する米軍の軍事活動を「安全・安定回復の活動」とみなすこともあるとしています。川口外相にいたっては、「法的には、イラク国民の抵抗は合法的ではない」と答弁し、イラク国民の抵抗に対して、自衛隊が「武器を使用することはありうる」とまでのべているのです。小泉首相もこのことを追認しました。
自衛隊の派兵が、米英占領軍と一体となって、イラク国民の抵抗を抑圧し、場合によっては武器を使用するというのは、イラク国民に銃口を向けるものであり、断じて容認できません。
第三は、イラク特措法案の前提となっている米英のイラク戦争の正当性は、いまや根本から崩れていることです。
米英がイラクへの武力行使にあたって、最大の口実にしたのが大量破壊兵器の問題でした。ところが大量破壊兵器はいまだに発見されておらず、米国でも英国でも、戦争の正当性が大問題になっています。
米英のイラク戦争をいちはやく支持した小泉首相は、イラクが大量破壊兵器を保有していると断定しておきながら、いまだその誤りを認めていません。それどころか、「フセイン大統領が見つからないからといってフセイン大統領がいなかったといえるのか」と何回も開き直りました。こんな詭弁でイラク戦争を正当化する法案を強行するなど絶対に許されません。
このイラク特措法案は、参議院が一九五四年六月二日に採択した「自衛隊の海外出動を為さざることにかんする決議」をじゅうりんするものです。この決議に照らせば、現に戦闘が多発しているイラクへの自衛隊派遣も、米英の軍事占領支援も許されないことは明白です。しかも「自衛隊の海外派兵恒久法」の検討をするなどというのは言語道断です。
米国の不当不法な戦争で破壊され傷つけられた、イラクの国民と国土の復旧、復興のために必要なのは自衛隊派兵ではありません。イラク国民が求めている食糧、水、医薬品、学校用具、上下水道や発電施設の修理などの復興支援は国連中心で、憲法の平和原則にもとづく非軍事的手段で積極的に進めるべきです。
以上のべたように、本法案はどこから見ても許されないものです。政府の詭弁と虚構が明らかになるにつれ、国民の反対の声が高まり、どの新聞の世論調査でも反対の声が大きく広がっています。こうした国民の声に背くことは、わが国議会政治に重大な汚点を残すものであり、断じて許されません。
たとえイラク特措法案が与党三党の暴挙で成立したとしても、たたかいは終わったわけではありません。わが党は、自衛隊のイラク派兵の実施を許さないために、いっそう奮闘することを表明して、反対討論を終わります。