2003年7月31日(木)「しんぶん赤旗」
今米国内でイラク戦争にたいする見方、そしてブッシュ政権そのものに対する評価が大きく変わりつつあります。
週刊誌『タイム』(七月二十八日号)掲載の世論調査によると、「イラク戦争は米国人の命やその他のコストをかけるに値すると思いますか」との設問に対して「思う」が49%でした。これに対して「思わない」は45%で、イラク戦争開始直後と比べると12ポイントも増えています。
また最近の別の調査によると、イラクでの軍事作戦は成功していると思う人が三月末の52%から39%に急降下。また、イラクでの米軍にたいする攻撃が現状のままと、さらに激しくなると思うを合わせると67%になっています。
さらに注目されるのが、来年の大統領選でブッシュ氏に必ず投票するという人が33%にたいして絶対に投票しない人が36%に及んでいることです。一年前、9・11同時テロ以降、九割以上を占めて圧倒的だったブッシュ大統領の支持率は、完全に逆転しています。
米国メディアの論調もこの半年で大きく変わりました。
ブッシュ大統領が、米空母の艦上で仰々しく「主要戦闘は終了した」「米国は一つの対テロ戦争に勝利した」と宣言してから三カ月。ところが今、イラクでは毎日のように襲撃を受けた米兵の死亡が報じられています。死者の数は戦争作戦中の戦死者数を上回っています。そして、大量破壊兵器情報にかんするウソ。
その中で、かつてブッシュ支持一色といってもよい時期があった新聞やテレビの論調が、明らかに変わり始めています。
各メディアとも競って、ブッシュ大統領の今年の一般教書のウソ、大統領の責任について報道。長引く駐留の影で広がる米陸軍第三師団兵士の間に高まっている不満と不安、士気の低下について実にリアルに伝えています。
週刊誌『ニューズウィーク』(七月二十一日号)は、「毎週十億ドルの戦費」と特集を企画。そのなかで、五月一日から七月九日までに死亡した米兵48人の顔写真を出身地、年齢を明記して掲載しています。
「キリング・フィールド 毎日のように米兵が死んでゆく」(『ニューズウィーク』七月二十九日号)、「戦争はついに米国に戻ってきた」「イラクの悪夢がブッシュ大統領を沈没させる」(『タイム』同二十八日号=写真=)。
ネオコンの本拠アメリカン・エンタープライズ研究所から遠くないところに事務所をおくシンクタンク、ニュー・アメリカ財団の副理事長で政治外交評論家のスティーブン・クレモンス氏はこう指摘します。
「ネオコンがブッシュ政権に影響を与えているのは事実だ。しかし、ネオコンとブッシュ政権自身の矛盾が今急速に表面化してきている。大量破壊兵器のニセ情報問題は第二のウォーターゲート事件となってブッシュ政権をゆさぶる可能性もある」
かつて、アメリカのベトナム侵略戦争を根底から揺るがし、ニクソン大統領を退陣に追い込んだスキャンダルの再来となるのかどうか。今米国内の様相が、米「帝国」を追いつめたかつてのベトナム戦争当時にも似た状況となりつつあるといっても必ずしも大げさではないようです。(ワシントン支局)(おわり)