2003年7月31日(木)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 こんど「仲裁法」という法律が成立しましたが、どんな問題がありますか。(長崎・一読者)
〈答え〉 「仲裁法」は七月二十五日に成立しました。当事者間に合意がある場合に、裁判ではなく一人または二人以上の仲裁人に紛争の解決を委ねる仲裁制度について定めています。
仲裁制度はもともと、国際商取引での紛争などを迅速に解決する制度として、整備が提起されていたものです。一定の限られた範囲で発生した紛争を、対等な当事者の合意を前提に迅速解決をはかる仲裁制度ならば、合理的なものといえます。しかし、いったん双方が仲裁に解決を委ねる合意(仲裁合意)をすれば、判決に相当する「仲裁判断」に不満があっても、裁判に訴えることは原則として認めないのが仲裁制度です。仲裁対象をむやみに広げれば、憲法三二条の「裁判を受ける権利」の重大な侵害となります。
ところが今回の仲裁法は、国民との裁判を避けたい財界・大企業などの思惑が反映され、仲裁対象をほとんど民事紛争一般に広げてしまいました。しかも過去に起こった事件だけでなく「将来において生ずる」(第二条)紛争の仲裁合意も有効としました。これによって大企業などが、将来の紛争は仲裁に委ねると契約に盛り込んだ場合、採用されたい労働者や取引を続けたい下請け企業などが拒否するのは困難で、むざむざ裁判を受ける権利を奪われかねません。
この点では、国民の運動によって、消費者契約や個別労働紛争では、仲裁合意を解除できるとしたり、無効とする規定が法の付則に設けられました。しかし「当分の間」という留保がつけられています。他方、元請け大企業と下請け企業などの関係では解除・無効などの制度は盛り込まれず、下請け二法など経済的弱者を保護するための法制度が、仲裁によって骨抜きにされる危険があります。
こうした重大な問題点があるため、日本共産党は仲裁法に反対しました。
(清)
〔2003・7・31(木)〕