日本共産党

2003年8月2日(土)「しんぶん赤旗」

本当にこんな予算でいいのか

来年度概算要求基準のメッセージは


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 雇用と老後の不安が渦巻いています。景気の足取りは重いままです。いまほど暮らし応援の政治が求められているときはありません。ところが、小泉内閣が1日決めた来年度予算の概算要求基準は、いっそうの暮らし破壊宣言です。(渡辺健記者)

年金給付は抑制、狙う消費税増税

社会保障に際立つ冷たさ

 解散・総選挙を念頭に、具体化を先送りしたとの評価が商業紙などに目立ちます。しかし、総選挙で小泉与党が勝つようなことになれば、どのような予算編成が、待ち受けているかのメッセージは明確に読みとれます。

 ひとつは、社会保障への際立つ冷たさです。

 高齢者が増えれば、社会保障関係費は増えていきます。「自然増」が来年度は九千百億円見込まれています。これを二千二百億円圧縮して、六千九百億円に伸びを抑えるというのです。

 どうやって、抑えるのか。(1)年金給付などの物価スライドを実施(2)物価・賃金動向を踏まえた診療報酬・薬価の国庫負担の抑制(3)介護の「改革」─を打ち出しています。

 たとえば年金給付の物価スライド実施。財務省は今年の物価下落分(0・4%、二百億円)だけでなく、過去三年の積み残し分(1・7%、約八百五十億円)も加えて反映させるよう主張しています。

 仮に2・1%の引き下げとなった場合、予算上の影響は約千五十億円ですが、国民への影響はそれにとどまりません。年金支給総額は四十兆円を超えており、八千億円以上の影響が出ます。月二十三万六千円を受給する厚生年金モデル世帯(夫婦二人、四十年加入)の場合、月約五千円、年間約六万円も給付が減ることになります。

 社会保障の四兆円の負担増に加えて、給付の削減圧力はとどまるところを知りません。さらに、社会保障財源の確保を口実に、低所得者ほど負担が重い“福祉破壊税”・消費税の税率を引き上げる論議は政府税調や経済財政諮問会議でも活発です。

国庫負担金は廃止・縮減、教育標的

地方へのしわ寄せ

 地方へのしわ寄せも本格化します。

 地方自治体への国庫補助負担金は、小泉内閣の「骨太の方針」第三弾で、〇六年度までに「四兆円程度をめどに廃止・縮減等の改革を行う」と決められています。来年度はその初年度です。

 経済財政諮問会議で民間議員が提案した「(〇四年度は四兆円の)三分の一程度」の廃止・縮減を実施すると、一般会計分だけでも一兆円程度の削減をしなければならなくなります。

 狙われているのは、教育や福祉です。小中学校教員の給与の半分を国が負担している義務教育費国庫負担金(〇三年度約二兆八千億円)は「規模が大きく、今後どのように扱っていくかが重要な論点」(経済財政諮問会議議員の本間正明大阪大学教授)と、「思い切った改革」の標的にされています。幼稚園・保育園一元化とからむ保育所運営費負担金なども重点的な対象項目にあげられています。

浪費は温存

軍事費は聖域、公共事業量減らさず

 一方、浪費には思い切ったメスが入れられようとしているのでしょうか。

 軍事費ははじめから聖域扱いです。概算要求基準で、「義務的経費」は社会保障関係費をのぞいて「前年度並み」とされています。「義務的経費」には、五兆円の軍事費の大半(人件費、正面装備などの後年度負担の歳出化経費、在日米軍への「思いやり予算」など〇三年度で四兆三千億円)が入っており、「前年度並み」ということは、軍事費の聖域扱いはやめないということです。

 公共投資関係費はどうでしょう。経済財政諮問会議で民間議員が主張した「7%以上削減」すら退けられました。落ち着いたのは、前年度と同じ「3%以上削減」です。

 〇三年度の公共投資関係費は約八兆九千億円です。3%というと二千七百億円程度にすぎません。3%を譲らなかった理由について、塩川正十郎財務相は経済財政諮問会議の席上、「(3%削減は)党に説明し、やっと納得してもらった」数字であり、「公共事業の量を削減するのではなく、コストを削減していきたい」と語っています。つまり、3%削減というのは「単価を削って予算を節約する」数字であって、事業量を減らそうとしているわけではないということ。そこには、無駄な事業や急がない事業を抜本的に見直そうという発想はありません。

「日本経済の最大の弱点」このゆがみにメスを

社会保障費より多い公共事業費

 日本の予算編成の異常さはサミット(主要国首脳会議)参加国のなかでも際立っています。

 国と地方で公共事業費に四十一兆円、社会保障費に二十五兆円(二〇〇〇年度実績)──。

 「世界のなかで、国民の暮らしを支える社会保障のために、国や地方が出す支出よりも、大型プロジェクト中心の公共事業に出す支出の方が多いなんていう国は日本以外どこにもありません」

 「企業と労働者のあいだの関係で、働くものの暮らしや権利を支える仕組みが弱いのに、それに加えて、政府の税金の使い方も逆立ちになっています」(日本共産党の不破哲三議長、七月十八日の党創立記念講演)

 不破議長が、「日本経済の最大の弱点」と指摘したこのゆがみにメスを入れない限り、いくら「改革」を叫んでみても、改革の名に値しません。むしろ、そのゆがみを拡大しているのが、小泉「改革」です。


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