2003年8月4日(月)「しんぶん赤旗」
七月下旬のワシントン市内。ある労組の本部会議室で、民主党系シンクタンクが実施した世論調査の検討会が開かれました。参加したのは幅広い年齢の五十人近く。ほとんどが民主党系の労組や団体の活動家です。(ワシントンで浜谷浩司)
配られた報告はこう指摘しています。「ブッシュ大統領はこの間、同時に三つの分野で大きく地歩を失った。経済、戦争・対外政策、そして信頼だ」
経済ではかねてから、大統領に強い不満が表れていました。今回、とくに目を引いたのは、対外政策での変化でした。
対外政策の今後の「方向」はどうあるべきかとの質問。「ブッシュの方向」への支持は、五月、六月と54%を維持したあと、七月には47%に低下。反面で、「(ブッシュとは)かなり違う方向」への支持が、39%、40%のあと、46%に上昇しました。
イラクではいまも、毎日のように米軍に犠牲者が出ています。戦費もかさんでいます。そして、大量破壊兵器は発見されず、ブッシュ政権が戦争正当化のため、世論をミスリードしたとの不信が強まっています。
とはいえ、「民主党が前進しているとの証拠は見当たらず、変化の多くは、大統領への信頼の低下による」と報告は分析します。
質疑応答ではこんなやりとりが……。
「外交分野でブッシュとのギャップを埋めるには、どんな手があるだろうか」
「北朝鮮問題がある。大量破壊兵器問題で、武力行使を辞さない姿勢を、強く打ち出すことだ」
ブッシュ大統領と「タカ派」を競おう、といわんばかりの発言に、とくに意見は出ませんでした。
民主党で来年の大統領選に名乗りを上げている九人中、現在も議員である六人について、昨年十月に米議会が採択した対イラク武力行使決議への投票をみると――。
ケリー上院議員 賛成
リーバーマン上院議員 賛成
エドワーズ上院議員 賛成
ゲッパート下院議員 賛成
グラハム上院議員 反対
クシニッチ下院議員 反対
他の問題での投票も含めると、平和を守る立場で一貫しているといえるのは、クシニッチ下院議員一人という状況です。
民主党関係者のあいだで、ある新聞記事が関心を呼びました。
「一九九二年にクリントン候補を勝利させた民主党穏健派グループが、減税とたたかい、イラク戦争に反対する怒れる『極左』というイメージをもたれたら、民主党の敗北は必至だと警告した」(七月二十八日付ニューヨーク・タイムズ紙)
同紙によれば、クリントン大統領とともに活動し、現在はリーバーマン上院議員の顧問というペン氏がこう語ったといいます。
民主党は国家安全保障分野で「信頼に足ることを示さねばならない」。イラク戦争に反対だとみられたら、「それは不可能だ」。
開票をめぐって、もつれにもつれた二〇〇〇年の前回大統領選挙。ブッシュ氏は大統領の座を不正に得たとみる人がなおいます。
このとき、市民運動の指導者として広く知られるラルフ・ネーダー氏が、緑の党の指名を受けて立候補しました。
「私はネーダー氏に投票した。それは誤りだった。あのとき、みんながゴアをおしていれば、これほどひどい政治にはならなかった」
ゴア候補への支持が、本当の革新につながらないことを知りながら、ある左翼知識人がいいます。米国政治の混迷を象徴しています。
立候補しないよう求める声があるなかで、ネーダー氏は立場を明らかにしていません。候補者擁立の方向を探っている緑の党は、二〇〇四年七月の党大会で決定することにしています。