日本共産党

2003年8月6日(水)「しんぶん赤旗」

米覇権主義を賛美、迎合

海外派兵の自由化鮮明に

「防衛白書」 世界の流れに逆行


 二〇〇三年版「防衛白書」は、米国がイラクで発動した先制攻撃戦略につき従い、日米軍事同盟の「世界化」、自衛隊の常時海外派兵態勢づくりを前面に押し出した内容になっています。小泉内閣の異常なまでの米国追随姿勢と、その危険を示しています。(田中一郎記者)

米中心の国際秩序正当化

 白書に貫かれる特徴の一つは、米国の世界戦略、覇権主義に対する徹底した賛美と迎合です。

 白書は「米国は唯一の超大国として、軍事力、科学技術力などで国際社会における優位を維持している」と指摘。「こうした圧倒的な国力を背景として、国際関係は米国を中心として新たなものになりつつあり、…イラクに対する軍事作戦を通じて、この動きは加速されている」と強調。米国中心の国際秩序づくりの動きを正当化しています。

 イラク戦争については「安保理が有効な手段をとれない場合には、脅威を放置するという妥協的な態度をとらず、米国と同盟国・友好国のためには、断固たる手段をとるという米国の強い意志と能力を示したといえる」と評価。国連憲章に基づく平和秩序を守り、問題の平和的な解決を求めた国際社会の圧倒的多数の声を「脅威を放置するという妥協的な態度」と暗に非難しています。

 米国の国連をも無視した先制攻撃戦略について「テロ組織とテロ支援国家への対応として、敵対的な行動の機先を制し、また予防するため、米国は、必要に応じて先制的に行動するとしている」と肯定的に紹介。「米国が単独でも軍事行動を行い得る能力を備えていることなどを踏まえると、米国にとっての同盟の価値は、同盟の存在そのものだけではないとの指摘がなされている」としています。今後、米国の先制攻撃戦略に対して積極的、能動的に協力することが必要だという認識を強くにじませています。

派兵“恒久法”整備を評価

 こうした情勢認識を踏まえて、白書は、日米軍事同盟の「世界化」、米国に追随して自衛隊を地球的規模で自由に派兵する態勢づくりを進める立場を鮮明に打ち出しています。

 白書は、五月の日米首脳会談で「世界の中の日米同盟」の強化で合意したことに言及し、「日米両国には、アジア太平洋地域における協力のさらなる充実と同時に、よりグローバルな課題への取組において…連携を強化していくことが求められている」と強調。その「協力の一例」として、テロ特措法に基づくインド洋での米軍支援を挙げています。

 日米軍事同盟をアジア太平洋地域にとどまらず、世界的規模に拡大することの宣言です。

 そのうえで白書は、新たに「今後の防衛庁・自衛隊のあり方」という章を設け、その柱の一つとして「国際的な安全保障環境の安定化などのための積極的・能動的な取組」を挙げています。

 インド洋での米軍支援や国連平和維持活動(PKO)など「自衛隊の国際的任務」が「主要な活動の一つになったといえる」と強調。「今後の軍事力の役割は、単に脅威に対して防衛するだけではなく、平和や安定のために積極的に働きかけることが求められる」とし、いっそうの海外派兵の推進を打ち出しています。

 一方で、自衛隊の本来の任務と強調してきた「本格的な侵略事態への備え」については「近い将来、わが国に対する大がかりな準備を伴う着上陸侵攻の可能性は低い」と指摘。「本格的な着上陸侵攻に備えた装備などの規模は縮小を検討」するとの方針を打ち出しました。

 具体的な派兵体制のあり方として、昨年十二月に福田康夫官房長官の私的懇談会「国際平和協力懇談会」が打ち出した、多国籍軍に軍事支援をおこなうための恒久法整備の提言に言及。同提言を「真摯(しんし)に受け止めつつ、防衛庁・自衛隊の国際的な役割やあり方について、今後、いかに考えていくかといったことも大きな課題である」と、いつでも海外派兵に即応できるための法整備の動きを評価しています。

 自衛隊のPKO活動については「『若葉マーク』を卒業する時期に来た」「今まで以上に困難な任務を的確に遂行することが求められている」と強調しています。

戦争ができる国家、軍隊へ

 白書が、自衛隊は「運用の時代」に入ったと宣言し、そのため、実際に戦争ができる国家と軍隊への強化をうたっていることも重大です。

 米国が海外で起こす戦争に日本が本格参戦する有事関連三法の成立について「わが国の防衛政策にとって歴史的転換点であるといえよう」と強調。戦時の国民統制法である国民保護法制について「早急に関係する団体や機関との本格的な調整を進める」とし、米軍支援法制なども「今後、検討していく必要がある」と強調しています。

 現在、防衛庁は、陸・海・空の各自衛隊の有機的連携を目指す「統合運用」態勢の強化を進めています。白書は、その必要性について「(統合軍である)米軍との共同が容易な統合運用の態勢とし、平素から米軍との調整を円滑に行い得る態勢を構築する」ためとし、共同作戦態勢強化が狙いであることをあからさまにしています。

 イラク戦争にみられる米国の覇権主義に対する国際社会の批判が高まるなか、あくまで米国に追随し、海外での日米共同作戦態勢の強化を図る――。白書に示された小泉内閣の米国追随路線は、世界から孤立する道でしかありません。

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